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子どもの顔にカメラをクロースアップさせ、その表情をリアルに写しとる手法や、セリフを用意せずアドリブで演じさせて自然な振る舞いを引き出す演技指導など、今作に是枝監督の『誰も知らない』や『万引き家族』を重ねるのはごく自然な反応でしょう。それもそのはず、カルラ・シモン監督は実際に好きな監督の一人に是枝さんの名前を挙げており、影響を受けていることは間違いないと思われます。 正直なところ、意味ありげなシーンや社会問題を提起するような描写が何の説明もなく断片的に繰り出されるわりに、後半ではそれを処理しきれなくなったのか、どんどん話が単調なトーンに落ち着いてしまいますし、終わらせ方は「またそれ?」と言いたくなるほどベタです。 しかし、端々にほとばしるセンスが溢れており何とも忘れがたい余韻を残すことは間違いなく、色々と行間を埋めて想像したくなる映画本来の楽しさに満ちています。 何より、「子どもを撮る天才」の王座に挑む刺客がまた一人スペインから現れたのかと思うと、監督のこの先に期待したくなる自分がいます。子役を扱った、若き才能の片鱗を味わう一作として、『フロリダプロジェクト』と共に注目に値する映画だと思います。
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