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第二次世界大戦下に実際に起きた「カティンの森事件」を題材として、事件で父親を亡くしたアンジェイ・ワイダ監督によって映画化された2007年のポーランド映画 ・ 1939年9月、ポーランドは西からドイツ、東からソ連に侵攻され、両国によって分割されてしまう。ソ連によって占領された東部へ、夫のアンジェイ大尉を捜しに妻のアンナと娘がやって来た。アンナは捕虜になっていた夫に再会するも、目の前で収容所へと移送されていく。やがて独ソ戦が始まり、1943年、ドイツは占領したカティンの森で虐殺されたポーランド将校たちの遺体を発見する…。 ・ 事件で父親を殺された監督が、構想に50年、製作に17年もかけて完成させた作品だけに、並々ならぬ事件への思いを感じる。ここまでの大量虐殺が、世界的にあまり知られていないだけに、この作品が伝える真実を世界は受け止めなければいけない。 , 西からドイツ、東からソ連に侵攻された当時のポーランドのことを考えると恐ろしい。どっちに逃げても人権など尊重されないわけで、命の保証もない。この事件はプロパガンダに利用され、真実は闇に葬られてきた。 ・ ソ連が戦勝国になったことや、戦後のポーランドを統治したことから、この事件を語ることはタブーとされてきた。戦争の勝者が正義だなんてことはないのだ。ポーランドの監督がこの事件を映画化したことが事件だった。 ・ 2009年にロシアの首相が事件を犯罪として認めたが、謝罪はしなかった。2010年4月に追悼式典がポーランドで行われようとしたが、式典に向かう飛行機が墜落し、ポーランド大統領夫妻をはじめ、ポーランド政府高官が多数亡くなったため、式典は中止となった。 ・ 日本でもこういう事件を積極的に扱わないのは、似たような問題を抱えてる上に、どちらかというと加害者側だからだろう。こういう問題になると、原爆の話を持ち出すしかなくなる。 ・ この作品の生々しさは観た人にショックを与えるだろう。R指定されているのも仕方ないかもしれないが、こういう隠されてきた真実を子供たちに伝えることも大事だと思う。 ・ この事件を知らずに、ポーランド大統領が乗った飛行機が墜落したことも知らなかったことが恥ずかしい限りだ。第二次世界大戦の加害者であり、被害者である日本に住む人として、他人事ではないこの事件を知るためにも、この映画は観るべき作品だ。
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