
uboshito
Usotsuki Trick
Avg 3.3
すばらしい。探偵役があたりかまわず説教を垂れまくる同枠の「ミステリと言うなんちゃら」みたいな作品の数十倍、思索と思慮と哲学と優しさに満ち溢れたドラマだった。あちらの作品では、主人公は、視聴者も作中人物も解けない、わからない真相を、透視能力に近いやり方で明らかにしてきた。ほぼ超能力者だったのに、作中では能力者として描かれなかった。その反省からなのか、本作では、主人公の「嘘解き」という超能力で大体の答えがわかってしまうので(能力者であることは最初から明かされている)、ミステリーという骨格はもう放棄して、時代劇風セットを構築しながら、ミステリーではない部分でドラマを展開していたように思える。 それは、「嘘が聞こえる」という設定によって、本来なら目に見えない人間がつく嘘と、本当のこととの関係性を、見事にドラマの中で示すという、稀有な試みだったと思う。特に、全11話中の第10話がずば抜けてすばらしく、この1話だけで名作級レベルに到達した。もちろん、ここにくるまでに積み上げた話数とそこでのやり取りがあってこその第10話なわけだけれど。「嘘が聞こえるということは、本当のことがわかる」。逆説的なテーマを見事に映像で構築できていたと思う。 この「嘘と本当」の狭間で揺れ続ける主人公と、それを100%受け入れてくれる探偵を見ながら、私たちがその「日常的に嘘をつくこと」や「異質な存在を無条件で受け入れる」ということについて、自分で考えるというドラマになっていた。そこが、主人公がやたら蘊蓄と説教を垂れるドラマとは一線を画してい…(←しつこい)。 何よりこの探偵の「受容」という、その心の広さと深さに感動する。この受容のプロセスを見ているだけで、鈴鹿央士のことを本当に好きになってしまいそうになる。演じるということは本来、嘘をつく行為のはずなのに、この人からは画面越しに、本当に嘘を感じない。そういう演技ができるということは、本当にいい人なのだろうと思わせてくれる。髪の毛の量が多すぎるのだけが気になった程度。 もうすぐ消滅するかもしれないフジテレビではあるけれど、こういうドラマが作れる能力があるだけに、ドラマ班だけはどうにか、どこかで生き残ってもらいたい。