
ひろ

Madadayo
Avg 3.1
黒澤明監督・脚本・編集によって製作され、黒澤明の遺作となった1993年の日本映画 ・ 昭和18年の春。先生は生徒たちに、作家活動に専念するために学校を去ることを告げる。しかし、退職後引っ越した家にも門下生たちは遊びにやってくるようになる。ある日、先生の還暦の祝宴が開かれていた最中、空襲がやって来る。やがて、空襲で家を焼かれた先生と奥さんは、知人の厚意で借りた三畳一間の掘建て小屋で暮らすようになるが…。 ・ 夏目漱石の弟子であり、芥川龍之介の兄弟子だった内田百間と門下生との交流を描いた作品。日本映画史上最高の監督である黒澤明の最後の作品でもある。黒澤映画と言ったらアクションのイメージが強いためか、興行的には失敗した作品だが、紛れもない傑作だと思う。 ・ 純粋な心の持ち主である内田百間を、「先生」と呼んで、心の底から慕う門下生や生徒たち。こういう心の交流は、観ているだけで心がぬくぬくしてくる。自分も毎年、恩師に会いに行くけど、喜んでもらえるのが嬉しくて行くようなものだ。この映画を観ていると、そういう心の繋がりの大切さを再確認できる。 ・ また、黒澤明の遺作だと思って観ると感慨深い。黒澤明と言ったら、映画の先生と言ってもいい存在だ。だから、内田百間と黒澤明を重ねて観てしまう。まだ死なないよという意味合いを込めた、「まあだだよ」という言葉が、遺作だけに切なくなる。まだまだ黒澤映画を観たかった。 ・ 内田百間を演じた松村達雄は文句なしの名演だったし、監督が何一つ文句を言わなかったという妻を演じた香川京子も素晴らしかった。井川比佐志や寺尾聰、吉岡秀隆といった後期、黒澤映画の常連俳優もしっかり顔を出している。 ・ 中でも所ジョージの存在は目立っていた。所ジョージの番組は欠かさず観ていたという監督は、そのままの所ジョージが好きだったから、なんの演技指導もしなかったという。そんな監督の期待に応えた、所ジョージらしい自然体の演技は印象的だった。 ・ 比べるまでもなく、黒澤明が最高の監督だったのは揺るぎのない事実だ。意味のない作品なんてひとつもないし、黒澤映画から学ぶことは多い。偉大なる黒澤明の最後の作品を味わってもらいたい。記憶に残らないような映画が量産されている時代だけど、黒澤映画は永遠に語り継がれるだろう。