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女性やLGBTなどの人権が多く取り上げられるようになったアメリカで、過去のものとして忘れ去られようとしているネイティブアメリカンに迫った作品。 物語は比較的淡々と進み、他作品に見られる盛り上がりは少ないが、シーン一つ一つに意味があり知的なストーリーと作品全体の人間臭ささが魅力。 ネイティブアメリカンの少女が暴行され、雪山で亡くなっているところから物語は動きだし、ストーリーが進み彼女の死の真相が分かり始めると、哀しみと同時に、人の強さに胸打たれる。後ろに迫り来る男達の影に怯え、痛みを訴える体にむち打ち、家族そしてボーイフレンドのことを想いながら夜の雪山を走る彼女を想像し涙が出た。 作中の私刑を快く思わない人には辛い作品かもしれない。しかし、犯人の一人であるあの白人を警察に突きだしたところで正当な裁きが下されるかは分からない。現に掘削作業員の白人に見られるネイティブへの軽視と、部族警察の白人に対する不信感は彼らだけでなく比較的多くの当事者が抱えている感情であることは想像に難くない。私刑は決して許さることではないが、彼らの苦しみを思えばその行動は理解できる。 ジェレミー・レナーの演技が好きで、人間らしい弱さと人間だからこその強さを併せ持ち寡黙だが彼の孤独や痛みを表現している。 そして、個人的に気になったのがこの作品で伝えたいことは、ネイティブアメリカンの権利だけでなく失われつつある彼ら独自の文化もあるのではないかなと。ラストの死に化粧がそれを物語っていて、年長者は亡くなり、若者は外へ流出したり薬や酒に溺れたりで本来の文化・伝統の継承がされていない問題も人権と共に提起されている気がする。
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