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星ゆたか

星ゆたか

3 years ago

2.5


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La Belle Époque

Movies ・ 2019

Avg 3.4

2023.2.21 〈タイムトラベルサービス〉の《新型エンターティメント・サービス》。 映画製作技術で希望対象者の、“戻りたい過去”を提出データに基ずき、役者とその台詞を当時のセットの中で再現。 現在の自分の肉体を、過去の状況に置いてみて意識変革を試みる。 物語の主人公は1974年の5月16日 リヨン、25歳の自分のいた記憶の世界に戻る。 愛する妻と出逢った………………………      あの日あの時あの場所へ。 これは普通の旅行の、現代の日本で言えばこの令和の時代から、かつて経験したことのある昭和の人間が、懐かしい昭和ワールドの施設に入りこむ感覚か。しかもさらにそこでは個人的な記憶と思いでの中の知人に囲まれて。 この映画の着想はこれまでのタイムトラベル作品に比べて、その点では独自性がある。 しかしその設定を観客に納得させるためには、過去の希望者の詳細な資料を提出する過程、再現する労力・時間・人間などの綿密な描写が必要であろう。 この映画の中では、関係ない他の人の過去のセットや役者を見せる空間背景描写があるが、それよりもそこはもう一つクリアして欲しかった所だ。 そして結果的には、近い将来可能性的に具体化されやすいと思える〈タイムトラベルサービス〉モデルといえば。 劇中主人公の妻が眠る前に、ベットの中で装置する、アイマスク型のバーチャル映像体験器具のような形式で。 つまり今流行りのVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの活用で、ゴーグルやアームセンサーを装着してのタイムトラベルだ。 しかも個人的な記憶データを各自提出し、デジタル映像で過去の、望む自身の空間(一般的な大衆向けでなく、限りなく私的個人専用向け)に仮想自分を送りこみ、意識変革を得る式のゲーム・エンターティメントなら、そう遠くなく実現しそうではないか。 こういったデジタル映像で脳機能を刺激し、人間の能力を補ったり引き上げたりすることは、年齢や性別、身体能力に関係なく楽しめるのではないか。 そうでなかったら、いくら当時の自分の知る過去に、役者やセットで戻れて、その場に気分だけ“乗る”ことが出来たとしても(現実には中々難しい)、その空間を抜ければそれで終わり、結果意識改革までには至らないと思う。 (贅沢なお金をかけた施設や空間で、身体経験(旅の利点)するだけの価値は認めつつの話だが。) 何故なら希望した時代の自分がいくら若かったはずでも、このセットで役者によって再現されたタイムトラベルでは、結局は年老いた現在の自分の肉体は変わらないのだから。 それと映画の感想としては。 夫を愛想づかしして浮気までしている妻が、過去の〈タイムトラベルサービス〉を受け意識変革した夫を、すんなり再び受け入れるのは、やはリアリティに欠ける。 またこの夫だって一時は妻より、妻を再現した若い役者の方に惚れちゃったのであり。妻への思いの回復は、妻の心がわりを確認できた上のことだから。 そしてあくまでも妻の中では、夫を追い出した間、夫との過去を思い返す思考より、浮気相手への失望で、夫を見直したとしか、映画からは感じられないからだ。 それでも結果的には、夫婦関係の溝が修復されそうなのは、何より大きな収穫だからドラマとして後味は悪くない。 それと主人公が自身のイラストレーターとしての活力復帰、個性実現が回復し(妻にも見直され)、未来への足掛かりになったこの“過去のタイムトラベル”の功績は大きい。 彼のこれまでの時代のデジタル化へのイラツキは、年代的のズレだけではなく。やはり社会の中での自己実現が、仕事の依頼が無くて出来てなかった、心のゆとりのなさだろう。 若さの特権って何だろう? 劇中で言われる《好奇心を持ち想像力を膨らませろ!創造することを止めるな!全力で生きろ!》ってことだろうか。 映画としては〈タイムトラベルサービス〉を総合プロデュースし、演出するアントワーヌと役者マルゴが私生活では恋人で、やがて結婚までたどり着く関係なのだが。この男が二人の私生活の断面も、つい演出してしまい彼女と、感情的な要らぬいさかいをする辺りは中々ユーモラス。 ギョーム・カネ(73年生まれ) ドリア・ティリエ(86年生まれ)さんらの好演。 また主演のダニエル・オートウィユさん(50年生まれ)は、以前の印象と違ったが。ファニー・アルダンさん(49年生まれ)はその昔の「隣の女」(81)フランソワ・トリュフォー監督作品の面影を残していて嬉しい。 監督は俳優出身のニコラ・ブトスさん(80年生まれ)本作品では脚本・音楽も担当しているそうだ。