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親子の物語、特に父と息子の物語だと思う。 前評判とは違って、意外に男気のある映画だと思った。 確かに、「納棺師」などという珍しい職業を扱っているので、随所にその紹介に費やされた時間も多い。 しかし、脚本の核となっているのは、主人公の本当の父との思い出、現在の父を象徴するところの会社の社長とのやり取り、これから生まれてくる子供にとって父となる自分の葛藤・・だと思う。 それを側面から強調するように、幼馴染の風呂屋の息子とその母親の関係が描かれ、その死に際して常連客のオジサンが息子に語る言葉は、さながら父の言葉のように聞こえる。 観客の心の琴線に触れるような美しいメロディのチェロは、父との思い出の曲であり、ラストはいい意味で予想通り、一世一代の「納棺」で終わる。 このように完成度の高い脚本は、当然のように賞の対象となるだろうし、そのとおりの結果になっていると思う。 でも私は、滝田監督に「巨匠」にならないで欲しいと思う。今までどおり良い脚本をきちんと映像化する職業監督に徹して欲しいと思う。 次回作が「釣りキチ三平」・・滝田監督らしくてほっとした。
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