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ネオレアリズモの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカが監督を務め、彼とのコンビで知られた脚本家のチェーザレ・ザヴァッティーニが脚本を務めた1948年のイタリア映画 ・ 長い失業の末、映画ポスター貼りの職を得たアントニオは、質屋から自転車を請け出し、六歳の息子ブルーノを乗せ町を回るが、ふとした隙に自転車が盗まれてしまう。警察に行くが相手にされず、自力で探すことにするのだが…。 ・ 第二次世界大戦後のイタリアの貧困、その中で生きる親子を描いたネオレアリズモの傑作。アカデミー外国語映画賞受賞作品でもある。当時のファシズムやナチズムに対する抵抗として、社会の現実を描写するネオレアリズモが盛んになっていった。敗戦後のイタリアを映し出す貴重な作品だ。 ・ 映画というものは、ただ漠然と観ていればいいものばかりではない。その映画が製作された時代背景などを考慮して観ると、より深い理解につながる。この作品も敗戦後のイタリアという認識で観ただけで、ラストの受け止め方も変わってくるだろう。同じ敗戦国の日本人として、この映画には考えさせられるはずだ。 ・ 主役の親子はオーディションで選ばれた素人だというし、当時のアメリカ映画のようにセットを組まず、ほとんどロケ撮影だというのも面白い。これにより、当時のリアルなイタリアを映し出すことに成功している。これぞネオレアリズモといった作品だ。 ・ 黒澤明監督も、「野良犬」などの作品で、戦後の日本の貧困などを映し出していたけど、映画は現実から目を背けるための娯楽作品ばかりではないということだ。その時代ごとの問題を映し出し、後世に伝えることも映画の大切な役目だと思う。娯楽作品ばかりじゃなく、こういった歴史的な名作を観ることも必要なんじゃないかな。
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