Comment
私の平凡な語彙力からようやくしぼり出せるのは世界が変わって見える映画。「普通」といわれる人から、そうでない人、どちらにも属さない、属せない人、あらゆる人に観てもらいたい映画。必見。 会話のできない自閉症という障害を抱える作家・東田直樹が13歳の時に執筆し、世界30カ国以上で出版されたエッセイ「自閉症の僕が跳びはねる理由」をもとにしたドキュメンタリー。恥ずかしながら原作は読んだことがない。 ドキュメンタリーで、尚且つ、映画。音響効果がずば抜けている。自閉症であることが故の、細やかな生活音の表現力が凄い。自閉症といわれる彼らの世界の在りようが、巧みに、実直に表現されるさまは見事だ。 私は「普通」という言葉が嫌いだ。映画でこの言葉がでて来るとだいたいげんなりする。「普通」という言葉には、明確な範囲はないと思う。でも、漂う正しさがある。でも、普通は「正し」くはない。そして、危うい。普段から「普通」と言う言葉は使わないようにしている。けれども、この映画は「普通」を否定せずに、普通ではないことも否定せず、言葉のありようを見つけてくれたような気がする。 あと、この映画には、思いだけでなく、具体的な手段が提示されている。愛情や熱意では解決しない問題点を整理して、具体的な解決策や手段が明確にされる。自閉症が取り上げられることで、大事にしよう!とか、個性として捉えようとか、そういう曖昧な理念みたいなところにとどまらず、誰にでも支援できることを提示してくれる。凄いことだと思う。感動に逃げずに、関わりの具体性がみえるのは、行動を起こす側として安心感があるし、今から私の行動はかわる。 こんなに原作を読みたくなる映画はないだろう。来場者プレゼントがブックカバーというのは良くできてる。 年間ベストだな。
1 likes0 replies