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2019年90本目はネットフリックスが配給権を獲得したものの、各映画祭で絶賛の嵐を巻き起こしたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA』。 アップリンクやシネマートなど、関東では小さな映画館でも拡大公開が決まっており、さすがにこの波を逃すまいとしたようですね。ただ、本作は65ミリで撮影した鮮明すぎる美しい映像と圧倒的な音響に浸るべき一作ですから、イオンシネマだけではなくもっと大きな映画館が名乗りをあげないとダメだと思うんですけど、収入が見込めないと後退りしてしまって…本当に悲しいやら情けないやら。 確かに70年代メキシコを背景に淡々と家族の日常を写し取っていくだけの映画ですが、全てのシーンに意味が込められていて何度となく見返したくなりますし、「映画とは」という命題をとことん突き詰めていったら最後に行き着くのはきっと『ROMA』のような作品だと感じます。 私は映画って人の生きざまを写しとるものだと思っているんですが、本作はまさにアルフォンソ・キュアロン監督の人生の足跡を辿る旅路そのものです。フィクショナルな要素もなく、彼の過去と思い出に満ちた非常に個人的な134分に付き合わされるんですけれど、赤の他人の貴重な一瞬を覗き見て共有するなんて「映画」でなければできない経験だと思います。 ネットフリックス配給になったのは少しでも多くの人に見てほしいとの狙いだったようですが、そうでもしないと注目を集められない今の世の中や、これが無料で見れちゃう時代に少々寂しい気持ちにさせられました。
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