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こちらもAmazonオリジナル作品でとても秀逸な映画でした。 メタルバンドのドラマーであるルーベン(リズ・アーメッド)は恋人でボーカルのルーと共にツアー活動をしている。 ある日突然ルーベンの聴覚が異常になり戸惑う彼は病院にかかる。 結果は聴力を失いつつある現状と、予後も悪く内耳インプラントを埋め込む手術しかない、とのこと。 とても高価な手術費や今後の不安に悩む…そんなお話。 そもそもヘロイン中毒だったルーベンは4年前から薬を断ち、ルーと一緒に大型トレーラーで生活していた。 音楽とルーを愛していたルーベンの突然の失聴と言うアクシデント。 それに対処する苦しみが、映画の巧みな音響でとてもリアルに訴えかけて来ます。 ルーベンが「聾唖…ろうあ」の支援施設に入ってからのシーンも彼の苦しみが伝わります。 支援施設の責任者のジョー(ポール・レイシー)の存在感がとても良かった。 入所する人間の車のキーや携帯を預かり、あくまでも施設の人間として役割を与える。 そして子どもから大人まで暮らす施設での穏やかな暮らしぶりには驚くほどでした。 手話ができないルーベンがいつの間にか習得したり、滑り台の表面に寝転びルーベンの叩くリズムを楽しそうに身体で感じる「ろう」の子どもの表情も良い。 でも慣れてきたルーベンは医療機関に連絡をして内耳インプラントの手術を受けるのです。 手術後、あんなに期待していた聴力は予想していたものとは大違い。 映画全般で「音」をうまく表現しているので観ていてとてもリアルな戸惑いになりました。 プツプツと切れる音、反響する不快な音、雑音と会話が混じり合う音、etc…。 最後に耐えられず器具を外して無音になるルーベンの表情はたまらないけど理解できる。 施設長の「聾唖は不便な障碍ではない。理念だ。」と言う言葉が印象的でした。 眼力の強いリズ・アーメッドの表情や演技も素晴らしく、久しぶりに心に響く作品でした。
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