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意地悪な見解で申し訳ないが、モロにアカデミー賞狙いの企画ではないだろうか。 白黒スタンダードの無声映画で、ご丁寧に四隅の部分を如何にも昔風にボカしている。ストーリーは、当時の映画界を描いたもので、いわば内輪話であり、更に凝ったことに、冒頭は映画評論家が喜びそうな劇中劇である。また、フランス映画にもかかわらず、当たり前のことだが舞台はハリウッドであり、当然字幕も英語だ。 このように、なりふりかまわず徹底的に「ハリウッド映画」というメディアにオマージュを捧げた一品を、そのハリウッド映画関係者が放っておく訳が無い。めでたくアカデミー賞となったという訳だが、現代の一般的な観客としては、やはりそう面白いものではなかったという気がするし、寧ろ他愛無いといったような性質のものだ。 何か、音楽評論家が、昔のSP録音を有難がって聴いて悦に入っているような感じを思い起こす。やはり、音楽を聴きたい一般の聴衆ならば、出来るなら最新鋭のデジタル録音を、BLスペックのメディアにより、重厚な装置で聴きたいと思うものではないだろうか? そういえば、この映画、音楽だけはフルオーケストラをきれいなステレオ録音で提供されており、ちょっとした違和感を覚えてしまう。つまり、ここで紛れも無く現代の映画であることを認識するのであるが、そう思うと益々白けてしまうのも事実だ。 まあ、この映画でとんでもない名演をしているワン公に対しては、皮肉でもなんでもなくアカデミー助演動物賞を捧げたい。
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