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【ハッとしっぱなし映画】 元警察官の視覚障害者。その事で発想される事をフルに表現したオリジナリティ爆発映画。日頃気づかない視覚障害の視点と、元プロならではの捜査の視点で、2時間ハッとさせられっぱなし。 ◆概要 韓国映画「ブラインド」('11)のリメイク。出演は吉岡里帆、高杉真宙ら。監督は「重力ピエロ」の森淳一。脚本は「ミュージアム」の藤井清美。 ◆ストーリー 自らの過失で弟を事故死させてしまった浜中なつめ。自身も失明し警察官の道を諦めた彼女はある日、車の接触事故に遭遇する。車中の少女の声に、誘拐事件の可能性を訴えるが、警察は目の見えない彼女を目撃者と認めない。なつめは少女を救うべく奔走しながら、弟の死とも向き合っていく。 ◆感想 中身ぎっしり。ハッとさせられる、視覚障害者ならではの視点で真相に近づいて行くのが面白い。大小様々な伏線回収もあり、練りに練られた構成なのも素晴らしい。視覚障害者の目線を再現する映像表現もあり、しっかりオリジナリティのある映画だと思う。 ◆視線の映像再現 冒頭、なつめが視力を失っていく視線、そして劇中何度もあった視界がぼんやり視覚化される映像表現。なつめの脳内に入り込むような、不思議な感覚だった。誘導ブロックに触れた瞬間、その視界が一気に広がるのが極め付け。正誤は置いといて、障害者にとってあのブロックがどれほど重要なものであるかも伝える、何気に社会的にも大事な描写だったように思う。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆ならでは視点 犯人の車内のにおいを覚えていたり、家の間取りを即記憶したり、一言二言で身長や食べたものを当てたり。視覚障害者ならでは、視覚以外の感覚が卓越している描写が面白い。犯人と対峙する際、家を停電させ、“同じ視覚レベル”に立たせる発想もこの映画ならではだった。スマホで映像を送り、リアルタイムで犯人から逃避する指示を出してもらうシーンなんてもうピカイチ。色んな工夫が詰まってた。 ◆脚本力 “警察は正義の味方だと証明してやる”のセリフにあった小さいものから、弟の形見で犯人に打ち勝つ大きなものまで様々な伏線回収。さらには、なつめが元警察官である設定をマックス発揮させる展開も。“死体切断は70%が浴槽で行われる”や、被害者の共通点から犯人が警察官であるという推理まで、(一本背負いを決められる設定まで笑)全て元警察官な事で説明がつく、見事な脚本力を見た気がする。 ◆ 総じて、この映画にしかできないことをしっかりやってるし、その意味でオリジナリティ爆発。視覚障害である事を逆手にとって活躍する姿も、社会的に素晴らしい。またいい映画に一つ出会えました。
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