
てる

Nomadland
Avg 3.4
なにやらすごい作品が現れたらしいとのことで、仕事の合間を縫って映画館に足を運んだ。面白かった! とんでもない作品だ! なんて感想はなかったものの自分の人生観に、静かにゆらめきを与えた。 定住なんてしなくてもいいのでは? とか、今の生活って窮屈だよな って感じる。しかし、仕事があって、住む場所があるっていうのは悪くないという全く正反対の思いにかられる。 彼女は仕方なく車で生活を始めたが、それを終わらせることも出来る。それをしないのは、それなりの理由がある。その理由を多く語ることはなかったけど、旅を観ているとそれが理解できる。友人との出会いと別れ、雄大な景色、豊かな自然。どれをとっても旅をする理由には充分すぎる。 ただ、定住せず車の中で生活するのは辛いことも多い。家に帰れば、温かなベッドがあって、トイレ、キッチン、洗濯機があり、コンビニが近くにあって、スーパーがあって、生活するに不便を感じない生活を送っていると、彼女の生活は酷いもののように感じる。 旅のドキュメンタリーを観ているような感覚だった。特別大きな出来事があるわけではない。旅の1年を切り取ったかのような作品だ。そこには生の人間たちが描かれていた。フランシス・マクドーマンドの演技が素晴らしかったのだろう。自然体で演技するというのは、どんなにか難しいものなのだろうか。熟練の彼女だからこそなのか、熟練だから難しいのかわからない。ただ、彼女だからこそよかった、それは確かだ。 きっと若い人ではダメなのだ。若いと妙にエロチックになってしまったり、ロマンチックな展開になってしまうだろうが、フランシス・マクドーマンドだとそうはならない。彼女が放つ哀愁がよかった。弱いのに力強さを感じる。彼女が積み重ねた辛さや喜びがシワとなって刻みこまれている。スクリーンに横顔が映し出されているだけで、様々なことに想いを馳せてしまう。 やっぱり、受賞してしかるべきの作品だったんだなぁ。