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ガイ・リッチーが監督・脚本を務めた、2020年公開のクライム・サスペンス。 暗黒街の大物であるミッキーの引退をきっかけに巻き起こる、500億円もの大麻事業を巡った悪党たちの壮絶な騙し合いを描いた本作は、ガイ・リッチー監督が久々に原点回帰を果たした作品だそう。自分はガイ・リッチーの初期作に関しては未見だったので本作の”原点回帰”ぶりは実感出来ませんでしたが、本作を観た事で遡って彼の作風や持ち味を探ってみたくなりました。「クセ者揃いの悪党たちが織りなす群像劇」という全体の構成に加え、時間軸を遡ったり関係無いシーンが突如挟み込まれるといった変則的な語り口からも、本作はタランティーノからの影響が顕著に表れています。不必要に残虐な描写も全編に配されていますし、ご丁寧にもトランクの内側から人物を捉える「トランク・ショット」と呼ばれる有名なカットまでオマージュされており、ガイ・リッチーファンのみならずタランティーノ映画が好きな人でも楽しめる作品だと思いました。しかし同時に本作(及びガイ・リッチー作品)では、タランティーノ作品には無いまた別の魅力も感じます。特に本作では、この作品全体が「リッチでオシャレな大人たちによる壮大な悪ふざけ」という風に演出されているこの粋な姿勢が素敵です。それに加えて劇中の登場人物たちのファッションとその着こなしがいちいちカッコいいのも大きな見どころだと思います。特に最高なのは、物語全体の中心人物でもあるチャーリー・ハナム演じるレイですね。彼が映る場面の全てに華がありますし、複雑な物語であるにも関わらず常に観客を飽きさせないのは彼の文字通り”ジェントルメン”な魅力によるものだと思います。 また本作の場合は、散りばめられた一見関係の無いエピソードの数々が「最後のドンデン返しに向けて後に伏線として機能する」という作りが為されている点でも、こちらの方がよりエンタメ性の高い作りだと言えます。美術面でのデティールやオマージュを楽しむ意味でも、何度でも観直したくなるような一作でした。とりあえず『スナッチ』くらいは観とこうかな。 ファ・アックさん。
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