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2020年24本目は、実際にダウン症を患うザック・ゴッツァーゲンを主演に迎えて送る『ピーナッツバターファルコン』。 ------------------------------------------------------------ 本作の端々から感じられるのは、主演を務めたザック・ゴッツァーゲンに対する作り手のとめどない愛情です。シャイア・ラブーフ演じるタイラーは兄の死から立ち直れず、自暴自棄の人生を送っています。彼はひょんなことからザックと出会いますが、ハンデを背負ったザックがダウン症のことを告白しても「だから何だ?」と言うだけです。 ------------------------------------------------------------ この台詞は出演者や監督のタイラー・ニルソン&マイケル・シュワルツの本当の気持ちなんだろうと思います。あまりにも自然なザックとタイラーのやり取りは、全てが演技指導のもとに成り立っているとは思えず、その向こう側に演者であるシャイア・ラブーフとザック・ゴッツァーゲン2人の関係性が見えるようです。そうした「裏側」が見えてしまうって映画としては駄目な事かもしれないんですが、本作の場合は全く嫌悪を感じず、むしろ心地良いんです。 ------------------------------------------------------------ 役柄にドンピシャのキャスト陣・心暖まるストーリーだけでも見る価値は十分ですけど、更に目を奪われるのは雄大な自然の美しさです。芦が一面に広がる河川、青すぎる空、イカダの浮かぶ大海原。シネマスコープ方式の撮影によって広大な景色が画面いっぱいに映し出される一方、ここぞの場面では被写体の表情をアップで映し出すバランス感覚が見事で、撮影監督ナイジェル・ブルック氏の手腕が光ります。 ------------------------------------------------------------ これまでダウン症の俳優が主演で銀幕デビューすることは類例が無いに等しく、彼を知る意味でも必見の一作ではないでしょうか。
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