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【ソー当没入する映画】 コロンビアレディがサングラスをかける粋なOPから、MIBの世界観に即没入。シリーズファンはもちろん、MCUファンにも嬉しいサービスに、映画好きであることの喜びを感じてしまう一本。 ◆概要 シリーズ4作目、7年ぶりのスピンオフ作品。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。出演は「マイティ・ソー バトルロイヤル」のクリス・ヘムズワース&テッサ・トンプソン、「美女と野獣」のエマ・トンプソンら。監督は「ワイルド・スピード ICE BREAK」のF・ゲイリー・グレイ。 ◆ストーリー イケメンでチャラ男風な先輩エージェントのHと、エリート新人女性エージェントのMという、性格のまったく異なる男女のエージェントがコンビを組み、MIB内部のスパイ摘発ミッションに挑む。 ◆感想 冒頭のコロンビアのクレジット、あの女神(コロンビアレディというらしい)がサングラスを取り出してかける粋なオープニング!シリーズファンがニヤつくこと必至。スピンオフ作品ということで、どこまでその世界観が変わってないか、またいい意味で変わっているかに注目だったけど、文句ナシ。ラストの意外な展開にも、グッと脚本力が光る。 まずは、過去作の世界観の再現性の高さが嬉しい。記憶を消すニューラライザー(特に説明がなかったので初見の人には不親切だったかも)、エイリアン用の武器であるディアトマイザーが車の中から次々と出てくる(もはや「キングスマン」を凌駕する、未来型武器が続々)のには時代の進化を感じる。コーヒー大好きエイリアンのニーブルや、エージェントOもご健在、さらにはあのパグ犬エージェントのフランクも!前述のコロンビアのクレジット含め、過去作をきちんとなぞる前半でグッとMIBの世界観に没入させてくれる。 ◆ 以下ネタバレ ◆ そこに「マイティソー バトルロイヤル」のソー&ヴァルキリーであるクリスとテッサがその世界もちょっとだけ引っさげて登場。小さなハンマーを敵に投げつける確実にMCUファンへのサービスシーンも。 さらにテッサ演じる女性エージェントが活躍する本作は、過去作で描かれてきた人種の多様性へのメタファーに加えて、ジェンダーレスの提言的シーンもちらほら。エージェントOとMが会話の中で「“メン”・イン・ブラック」のネーミングに引っかかるシーンや、Hのラストの「“メン&ウィメン”・イン・ブラックだ」なんてセリフは、22年前に生まれた本シリーズを、うまくジェンダーレスな現代で作り起こした当然のアウトプットなのかもしれない。 ラストの伏線回収的展開もアツイ。冒頭で3年前として描かれた「知恵と銃一本で世界を救った」、なんとも伏線的な匂いのするエッフェル塔でのシーン。それはニューラライザーを使った記憶のすり替えであり、ハイTに実はエイリアンがその後なり切っていた。これが例えば単に本作でスパイはハイTだった、なんていうだけのオチだったなら、ただのありがち映画に成り下がっていた。それを、ニューラライザーと、エイリアンが擬人化できるというこの映画ならではの要素を巻き込んで、最大限に膨らませたオチに落とし込んでいるのが素晴らしい。脚本力が光る。調べると、脚本は「アイアンマン」を手がけた脚本家ということで、ヒーローもので中身を面白くするのはお手の物だった、というところだろうか。 劇中、Mの恋愛観について、「きみに読む物語」をポーニィが例にとるシーンが。前述の「マイティソー」含め、滲み出る映画愛が監督はじめ製作陣から感じられたのも良かった。 ただ全体的に残念だったのは、ポーニィとの出会いや、エイリアンハイTに語りかけるラストのHに少し見えた話の唐突さ。ポーニィが可愛くて実は重要な役どころだし、HとハイTの絆を描きたかった気持ちは十分分かるだけに、もう少し丁寧な描き方が必要だったように思う。少女時代のMがキッズエイリアンと出会う伏線シーンも、せっかくなのだからもう少し感動的な回収のさせ方ができたのでは。 いずれにしても、やっぱりこのシリーズのエイリアンと共生するワクワク感が健在で、少し現実なのではと錯覚すらしてしまう没入感が素晴らしい。スピルバーグ印が付いていることに全く引けを取らない、とてもエンターテイメントな映画でした!
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