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油田の火事を消火するのには、大変な労力がいるみたいです。もちろん、普通の方法では消火できず、それ専門の会社がちゃんとあって、事業として立派に成り立っていて、豪勢に自家用機で世界中を飛び回っているのです。 この映画の主人公であるチャンス・バックマン(ジョン・ウェイン)は、この油田火災の消火を専門とする会社の消防士。 西部劇や戦争映画以外のジョン・ウェインの勇姿を見られる数少ない映画が、この「ヘルファイター」なのです。 真っ黒な煙をあげてゴウゴウと燃え盛る油田の火事をどうやって消すかというと、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の名作「恐怖の報酬」でも出て来ましたが、ニトログリセリンを投入して大爆発を起こさせて、無酸素状態にさせるんですね。 当然、酸素がなければそれ以上は燃えない、だから火が消えるということですね。 考えてみれば、業火とニトログリセリン。これほど危険な仕事はそうそうないかも知れません。 「ヘルファイター」というタイトルも決してオーバーではないことがわかります。 チャンスは、突発的な事故で怪我をしてしまいます。 彼には別居中の妻と娘がいて、おせっかいな同僚が二人にチャンスの事故を知らせたために、チャンスは数年ぶりに妻のマデリーン(ヴェラ・マイルズ)と娘のティッシュ(キャサリン・ロス)と再会することになります。 この母と娘の対照が、油田火災のスペクタクルと交互に展開されるドラマの重要な部分になってきます。 豪快な作風のアンドリュー・V・マクラグレン監督は、奇手を弄さず正攻法に徹し、むしろ古風と言っていいくらいの悠々たる演出ぶりですが、例によって師匠のジョン・フォード監督譲りのおおらかな、集団での殴り合いの場面もあったりして嬉しくなってきます。 スペクタクル・シーンの中ではやはりクライマックスが圧巻で、並んで燃えている5つの油井を消すのを妨げようと、ゲリラが出没してサスペンスを盛り上げてくれます。 この映画は家族の絆をしっとりと描いている一方で、実際の油田火災の映像もふんだんに盛り込んでの迫力あるアクションシーンが目を引きます。 自分の夫が、明日は死んでしまっているかも知れないと想像するだけで怖いのですが、マデリーンはその恐怖を乗り越えようとします。 ヴェラ・マイルズも随分と歳をとったが、実にいい味を出せるようになりましたね。 また、チャンスも武骨だけれど、妻を深く愛していることが見て取れて、ジョン・ウェインは、こういう役にもぴったりで、まさしく男の真骨頂を見た気がしましたね。 そして、この映画の前に出演した「卒業」でブレークしたキャサリン・ロスの魅力も充分に演出されていて好感が持てます。 生意気で行動的で情の深いティッシュという娘役は、男臭くなりがちなこの映画に花を添えていると思います。 とにかく、この映画は西部劇でもないのにテンガロンハットをかぶっていたり、酒場での乱闘シーンがあったりと、サービス精神が満点なのです。
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