
dreamer

Shakespeare in Love
Avg 3.3
ロマンティック・コメディの傑作「恋に落ちたシェイクスピア」は、16世紀のロンドンを舞台にして、タイトル通り、舞台脚本家であるシェイクスピアが主人公。 「ロミオと海賊の娘エセル」の執筆中に、スランプに陥ってしまい悩んでいた彼が、演劇好きの女性ヴァイオラと恋に落ちる。 まるで、これが「ロミオとジュリエット」創作秘話ですよと言わんばかりであるところが面白い。 ドタバタあり、ロマンスあり、ドラマあり、アクションありの贅沢な娯楽作品だ。 誰でも知っている人物や、その著作を題材に、好き放題に作った巧妙なパロディでもある。 同時に、映画好きの琴線に触れやすい「バックステージもの」であったりもする。 ステージの裏側を舞台に、演劇を作ることに傾けられる情熱や愛の賛歌を高らかに謳い上げるのだ。 しかも、コスチューム劇だからといって、真面目で堅苦しい映画でもない。 シェイクスピアって言うから構えてしまうかもしれないが、そんな必要はない。 実に軽やかで楽しい映画なのだから。 さりげなく現代的に味付けしたセリフに仕込まれたユーモア、目を見張る衣装や豪華なセット、格調高い雰囲気を演出する音楽。 二人の恋が、どういう形で大悲劇『ロミオとジュリエット』に結実していくのかという筋立てでも、散々笑わせつつ、二人の発する愛の言葉が、舞台のセリフに転換されていく、絶妙の構成と編集のリズム。 まさに映画を観る楽しみに溢れている。 最大の貢献は、トム・ストッパードがリライトで参加した脚本だろう。 『ロミオとジュリエット』、『十二夜』などに始まり、様々な元ネタを大小散りばめた巧妙な「シェイクスピア・パロディ」を、ロマンティック・コメディとしても、バックステージもののドラマとしても、クライマックスの「ロミオとジュリエット」初演というイベントに向けて、スムーズに収束させていく手際は、名人芸の域にあると唸らされてしまいましたね。 薀蓄を知っているにこしたことはないが、そうでなくても楽しめる作品になっているのは、基本的な骨格やシチュエーションの作り方が、しっかりとしているからであろう。 主演はジョセフ・ファインズとグウィネス・パルトロウ。 ジョセフ・ファインズは、名優レイフ・ファインズの弟で、兄に負けない整った顔立ちをしている。 活き活きとした、若き情熱的な舞台脚本家としてのシェイクスピア像を、現代人的な感覚を持ち込んで演じている。 グウィネス・パルトロウは、男装して舞台に上がる大の演劇好きという、心の通ったヒロインを魅力的に演じていて、おそらくこれが彼女のキャリアで、ベストと言える作品になっているのではないかと思う。 脇役にジェフリー・ラッシュ、トム・ウィルキンソン、ジュディ・デンチらの演技派のベテランを配しているが、女王陛下を演じるジュディ・デンチが、とにかく凄い。 短い登場時間なのに、その貫禄で全部持っていってしまっている。 あと、もう一人、「主役」だと騙されてマーキュシオ役をやることになるプライドの高いスター役者を演じるベン・アフレック。彼が芝居の中身に気がついた時の物言いが、実に笑えるんですね。 監督はジョン・マッデン。素晴らしい脚本とアンサンブルキャストを得て、流れるようなリズムとテンポで、軽やかに仕上げてみせた手腕はお見事。 ともかく、どこを切っても超一流の上質な娯楽映画であると思う。