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星ゆたか

星ゆたか

4 years ago

4.0


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Summertime

Movies ・ 1955

Avg 3.3

2022.2 昭和三十年。まだ海外旅行など珍しかった頃封切られ、イタリアの水の都ベニスを、一躍観光都市とした、魅惑の映画である。(同じ、″ヘップバーン"さんが、ローマを有名にしたように) 監督デビット・リーン(当時47歳)主演キャサリン・ヘップバーン(46歳)ロッサナ・ブラッティ(38歳)時の作品。 とにかく、初めて異国の地に立った者の、好奇心の目、憧憬の眼差し、それらの驚異と讚嘆の呼吸が、38歳の独身のヒロインの物語を通して、見事にフィルムに焼きつけられた。 走る車窓から眺めた帆船が、太陽の光を受けて黄金色に光って浮かんでいる海の景色に初まり、水の上のゴーストップ。都会の交差点のように青色から赤色に変わると、目の前をゴンドラが悠々と横切り、消防署の水上ボートが、けたたましいサイレンを鳴らして、まっしぐらに通り抜けてゆく‥‥‥。 アカデミー賞四度の受賞の名女優、キャサリン・ヘップバーンが、本作(オスカー候補、同じ年すでに亡くなっていたジェームス・ディーンは、「エデンの東」でノミネート)でも魅せてくれます。 妻子持ちの現地のベネチア・グラス商の男とヒロインが出逢う場面。 カフェのテーブルの席で自前の8ミリカメラを回している彼女。ヒールのあるサンダルから、片足が脱ぎかかり、なにやら背後から熱い視線を感じ、襟髪を直すような仕振りでチラリと横目で見た。すると微笑の眼差しの彼とバッチリ見合ってしまい、慌てて、『ウェ´ウェ´ウェイター』と呼ぶが、彼にイタリア語で呼び直してもらう。この旅で観光見物の他に、心の奥底で、奇跡の出逢いを期待していた彼女だが、いざ出逢ってしまうと、ドギマギしている38歳の女性なのである。その辺の 初々しさを実に魅力的に演じている。 花火の上がる晩のデート。彼が彼女のために買ってきた白いくちなしの花。運河に落ちて流れてゆく。手を差しのべて拾い上げようとするが、 届かない‥‥‥。いくつかの思いでを重ねて。 ラスト。帰国する決意を下した彼女、駅での彼との別れ。走り出す汽車、窓から手をゆっくり振り、ホームの彼の差し上げたくちなしの花を見て、何度もうなずく。すべては旅先での出来ごとであった。この旅情をかみしめて、ヒロインは、さらに魅力的な大人の女性になるのであろうか。駅での別れの名画の一本でもあった。