
てっぺい

Civil War
Avg 3.5
Oct 05, 2024.
【シビれル映画】 アメリカの内戦という大いなるもしもを、トランプ風刺でリアリティ満載に描く。戦場の音を巧みに表現して実はラージフォーマット向き。色んな意味でシビれル一本。 ◆トリビア ○ 出身地だけで身勝手に目の前の人間の〈生死のジャッジ〉を下していくシーンは、監督が、今、現実世界で起こっている〈差別の縮図〉として描き出したという。(https://www.cdjournal.com/main/news/-/113100) ○ ジョエルを演じたワグネル・モウラは、撮影に丸一日かかったそのシーンが、過酷で体力的にも苦しかったという。「自分と友人の命乞いをして、人種差別的なジェシー・プレモンスの演技を見て一日が終わる頃、僕は横たわって30分泣き続けたのを覚えています。とても強烈でした。」(https://www.cdjournal.com/main/news/-/113100) ○ その場所が、バージニア州のシャーロッツビルであることも暗示的。シャーロッツビルといえば、数年前に起こった白人至上主義者による威嚇行動、それによる死者が出た場所。事件直後、トランプが白人至上主義者たちを非難しなかったことは、アメリカの人の記憶に生々しく残っている。(https://bunshun.jp/articles/-/73151?page=3) 〇監督は、リーを演じたキルステン・ダンストについて、自身の役に本当にその経験を生きてきたようなリアルな感覚をもたらす稀有な才能の持ち主だと話す。「誰もが彼女を子役の頃から知っているから、ひとつの人生を生きてきた人物という感じがするんです。魂を奥底に隠している人もいますが、彼女の場合はそれが手の届きやすいところにあるんです。」(https://www.gqjapan.jp/article/20240924-kirsten-dunst-interview-2024-hype) ○ケイリー・スピーニーは演じたジェシーと同じように、将来に多くの不安を抱え、何かしなければという使命感に燃えているという。「彼女にはカメラの才能があり、それで世の中のためになりたいと考えている。そして私は、自分の演技を通して、今作が人々に会話のきっかけを与え、世界の現状に対して切に考えるようになればと願っています。」(https://www.leon.jp/peoples/251165?page=4) ○ 劇中に登場する、権威主義的な“3期目”の大統領は監督自身も「トランプを意識した」と明かしている。(https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/news/) 〇劇中に登場するアメフトのスタジアムやウィンターランド(※クリスマスの飾りつけをした広場)は実際の廃墟。監督は「(アメリカは)地方に考えられないような貧困、暴力、社会的不正や悲惨な生活があります。この映画のドキュメンタリー的な側面は、作りごとじゃなく本当のアメリカだということです」と語る。(https://www.banger.jp/movie/123861/2/) ○ 映画の冒頭に入ったテストトーンは、テストのために入れた音を、監督が気に入って残したのだという。人々の関心を引いて、あれは何だろうと考えさせる音であり、鑑賞者から反響もあったため効果的だったと音響監督は語る。(https://online.stereosound.co.jp/_ct/17723853) ○本作にカメオ出演したジェシー・プレモンスは「マット・デイモンに似ている人」として有名。実際に子役時代にデイモンの幼少期を演じており、デイモンも共演当時を「自分の実際の子ども時代より、彼のほうが僕の子ども時代そのものだった」と懐かしむ。デイモンの親友ケイシー・アフレックは「2人は声も似ている」と発言している。(https://moviewalker.jp/news/article/1219006/p2) 〇ジェシー・プレモンスは、リーを演じたキルステン・ダンストの実夫。予定の俳優が降板し、キルステンが「夫でよければどうぞ」と提案したという。(https://safarilounge.jp/online/culture/column/detail.php?id=16569&p=4) ○ 「可能な限り強烈な閃光と発射音が出る空砲をつかった」という監督。リー役のダンストは「特に建物の中にいるときはとてもうるさかった。ヘアメークのトレーラーはかなり離れているのに、ある爆発のシーンではトレーラー全体が揺れたんです」とその撮影のすざましさを証言している。(https://toyokeizai.net/articles/-/818913?page=4) ○ リー・スミスと、ジェシー・カレンという名前は、監督が尊敬するふたりの戦場カメラマン、リー・ミラーと、ドン・マッカランにちなんで名付けられた。ミラーを題材としたケイト・ウィンスレット主演の伝記映画『Lee(原題)』が2025年9月に公開予定、マッカランを題材とした伝記映画『Unreasonable Behaviour(原題)』で、アンジェリーナ・ジョリーが監督することが発表されている。(https://toyokeizai.net/articles/-/818913?page=3) ○ 監督は本作について次のように語る。「この映画で大切なのは、政治的に相違のある州が手を組んで、ファシズム的な大統領に、意義を唱えたということだ。右とか左とか偏った思考は会話を拒絶してしまう。それが分断の問題だ。」(https://toyokeizai.net/articles/-/818913?page=3) 〇監督は次のようにも語る。「劇中でアメリカが崩壊した経緯は決して語られない。それは観客がすでにアメリカがなぜ壊れているかを知っているからだ。そこで次に来る疑問は、この先、何が起こるのか?ということだが、それも観客はわかっているはずだ。私はこの映画の始まりと終わりを観客に託したんだ。この物語の最後の行き先を決めなければいけないのは観客なんだ。」(https://www.gqjapan.jp/article/20241002-civil-war-alex-garland-interview) ○ ガーランド監督が本作の脚本を書き始めたのは2020年、コロナ禍のまっただ中。世界が混沌としていく中で「世界の分断が明確化されている」ように感じたという監督は、「脚本を書く中で感じたフラストレーションは収まるどころか、次第に大きくなっていった」。そこから生まれたものは架空の物語ではあるが、“ありえるかもしれない未来”としてわれわれに警鐘を鳴らしている。(https://toyokeizai.net/articles/-/818913?page=2) ○ 映画予告史上初となる「360°体感!立体音響予告」を製作。『ゼロ・グラビティ』で第86回アカデミー賞・音響編集賞を獲得したサウンドデザイナーによる、360°方向から迫ってくる戦場の音の中に飛び込んでいくような、イヤホン必須の体感型予告となっている。(https://www.anemo.co.jp/movienews/newmovie/civilwar-6-20240927/) ○「シビル・ウォー」とは内戦のことで、アメリカでは南北戦争(1861~1865)のことを指す。北軍の「奴隷解放宣言」発表後、南部の黒人たちが北軍に流入、北軍が勝利した。合衆国は再統一されたが、南北両軍合わせて61万人以上が戦死し、いまもアメリカには南北が敵対した過去の傷跡が残っている。(https://lp.p.pia.jp/article/essay/983/382202/index.html) ○ 2024年5月、アメリカの世論調査機関「ラスムセン社」が、アメリカが5年以内に内戦に陥る可能性があると答えた有権者は41%という結果を発表した。(https://lp.p.pia.jp/article/essay/983/382202/index.html) ○ 来場特典は全5種のポストカード。通常上映では、3種類のアザービジュアルのポストカードがランダムで配布され、IMAX・Dolbyで鑑賞すると、それぞれ限定のオリジナルポストカードがプレゼントされる。(https://virtualgorillaplus.com/movie/civil-war-benefits/) ◆概要 【脚本・監督】 「エクス・マキナ」アレックス・ガーランド 【出演】 「スパイダーマン」シリーズ キルステン・ダンスト ワグネル・モウラ 「DUNE デューン 砂の惑星」スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン 「プリシラ」ケイリー・スピーニー 「エクス・マキナ」ソノヤ・ミズノ 「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」ニック・オファーマン 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」ジェシー・プレモンス(キルスティン・ダンストの実夫) 【製作費】 $50,000,000(推定。A24における史上最高額) 【公開】2024年10月4日 【上映時間】109分 ◆ストーリー 連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆大統領 大統領が“大勝利”間近である事を何やらカメラに向かって熱弁する様子から始まる冒頭。終わってみればこの“大勝利”は大いなる虚構であり、二期までの大統領就任期間を3期まで広げた(というセリフがあった)横暴ぶり。大統領に始まり大統領に終わるこの物語は、つまりこの男が諸悪の根源であり、全ての発端だとこの冒頭で記していた。監督は、ファシズムや暴力的な言葉に対する怒りが本作製作の根源だと語っており、また、この大統領はトランプを意識したとも明かしている。この物語が、現世で一歩道を間違えれば現実のものとなりうる恐ろしさで満ちていたのは、監督のそんな思いや演出からくるものだと思った。 ◆狂 そんな大統領を発端として、人間の“狂い”が描かれていく。冒頭の自爆テロから、ガソリンで火をつけられる黒人、吊るされた死に際の男達、ウインターランドでの銃撃に死体を踏み越える描写や、兵士3人に袋を被せ不必要に散弾を浴びせるシーンも狂気。なんと言ってもインパクトなのはバージニア。ジョエルを演じた役者が演技後30分泣き続けたといい、死体の山を前に次々と仲間が撃たれていくあのシーンのおぞましいこと。戦争が人を狂わせる事がこれでもかと映画全体で描かれ、そしてそのリアリティが強烈だった。また音も印象的で、轟音の銃声や微かなうめき声に(IMAXだったので尚更)震えるし、次々と銃殺するシーンにポップスが乗る、とてつもなく異様な音の演出も。特に意味はないらしいがオープニングクレジットのテストトーンも、エンドロールに入るグランジ的な曲も不気味。音による“狂”の演出も際立っていた。 ◆ラスト リーが銃撃に倒れるラスト。思えば、“勃起するほど興奮する”とジョエルが表現していたように、また前項のように、戦場が人を狂わせる事を懇々と描いた本作。英語で銃を撃つshootと撮影するshootは同じ単語であり、ホワイトハウス内では、まるで兵士の銃と同期するようにジェシーがシャッターを押していく。つまり、ジェシーもある意味戦場の毒に侵されていた訳で、リーがジェシーをかばったのも、銃撃回避の物理的なものはもとより、堕ちていくジェシーを救う精神的なものでもあると思った(あの場でリーが撮る写真はカラー、ジェシーのそれはモノクロであったのも、それを暗示する演出か)。リーがホワイトハウス前で吐き気を催していた事に、どうしたリー?と見ているこちらも不思議になるのがミソ。リーの反応が本来正常で、見ている我々すら本作を通じて戦場の毒に侵されている訳だ。リーの願いも叶わず、見捨てて進むジェシーの姿がなんとも悲しい。大統領の死体に笑顔で写真に映る兵士達が、人の死に無感情となる本作の極め付け。わきに映る残党は、おそらく何かしらの反抗をその後企てる訳で、戦争が生む憎悪の連鎖、戦争が終わらない事を暗示する演出。現実であの元大統領が引き起こしかねないとてつもない罪を、ラストで重々しく表現していたと思う。 ◆関連作品 ○「エクス・マキナ」('15) ガーランド監督の長編初監督にして代表作。第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。プライムビデオ配信中。 ◆評価(2024年10月4日現在) Filmarks:★×3.8 Yahoo!検索:★×3.0 映画.com:★×3.9 引用元 https://eiga.com/movie/101614/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/シビル・ウォー_アメリカ最後の日