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ワイオミング州ウインドリバーは広大で荒涼とした国土に支配され、アメリカであってアメリカではない場所です。到底信じられない数字ですが、平均寿命は49歳でイラクより20年も下回り、失業率は80%で発展途上国のジンバブエと同等、学校を中退する確率は40%で平均の2倍、若者の自殺率も2倍、児童虐待・妊娠・レイプ・DV・ドラッグ・アル中が蔓延…とまさに地獄絵図。しかし、これは全て事実です。 テイラー・シェリダン監督は本作を作るにあたり調査チームを派遣しウインドリバーの実態を把握しようとしたものの、何の統計も得られなかったそうです。 ネイティブアメリカンの居留地は白人の入植前からずっと存在していたにも関わらず、一方的な略奪の対象となり、石油採掘を巡る利権争いにより搾取され続けてきました。昨今のアメリカでは貧富の差が広がり、中間層を含めた没落が懸念されていますが、先住民との間に生ずる格差をこれっぽっちも議論してこなかったのは、「その方が都合が良いから」に過ぎません。 衝撃的な事実を突き付け、アメリカの抱える暗部を暴き出す作品として、今これほどまでに一見の価値がある映画は他にないと思います。劇中に登場する新米捜査官のジェーンと同様、私も自分の信じてきた常識が音を立てて崩れるような気分に襲われ、開いた口が塞がりませんでした。 この映画をきっかけにエリザベス・オルセンは性犯罪の被害にあった犠牲者を支援する団体への参加を表明したそうで、私自身も無知に蒙昧せず、「知ること」の大切さを今一度考え直す良いきっかけをもらえたと思っています。
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