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近作『スプリット』でも凄まじいカメレオン俳優ぶりを見せつけたジェイムズ・マカボイが、精神を病み次第に狂気に飲み込まれていく男を演じる、一風変わったテイストのドラマです。本作はほとんど彼の一人舞台と呼ぶにふさわしく、かの『トレイン・スポッティング』を執筆したアーヴィン・ウェルシュの描く破天荒なキャラクターを、時に醜く時に悲壮感たっぷりに演じ分けて見せます。 正直なところ、主人公のブルースはタイトルの『フィルス』が意味する通り正真正銘のゴミクズ野郎で、決して共感を呼ぶはずもない男です。しかし、ストーリーがだんだんと彼の過去に焦点を当てつつ、何故こんなことになってしまったのかを浮かび上がらせていく後半になると、心の底からブルースに同情してしまうのです。 そして、人をおとしめることに執着し自分のことしか考えていなかったはずの男が、あるシーンを境に非常に脆く、悲しみを必死に押し殺してきた繊細な人間なのだと気づかされます。仕事のし過ぎで精神的に追い込まれることの多い日本のサラリーマンは、もしかするとブルースに自分を重ねるところがあるかもしれないですね。
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