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2006年公開の韓国作品。 この年日本の映画界は21年ぶりに、邦画が洋画のシェアを上回ったと言われた。 私的に好きな邦画は、「フラガール」 「ゆれる」「武士の一分」。 洋画はその韓国の「グエムル-漢江(ハンガン)の怪物」「硫黄島からの手紙」 「ブロークバック・マウンテン」などが記憶に残っている。 物語は地方の酪農業に従事する青年の嫁不足に発する。 世間はベトナム・フィリッピンの女性との結婚を奨励する中、35歳の主人公ソクチュンは、近くの喫茶店に勤める小柄で可憐なウナに一目惚れした。 主人公を演じるファン・ジョンミンは、体重を15キロ増やしてから撮影に入り、劇中物語経過の心労のため痩せていった方が良いと、12キロ戻しての熱演したとのこと。 しかしそれを含めて、この主人公の一人の女性への一途な愛情の深さ、強さはもうあっぱれの一言に尽きる。 これぞ韓国キムチ・パワーの極みとでも言うべきか、感心しっぱなしの一編でした。とても淡白な私(?)去る者は追わず(でも記憶の小箱には仕舞ってどこかに持っている)の私からは、やや食傷気味になるような映画でもありました。 ヒロインのウナは、純情可憐な娘というだけでなく、どこか本人もじかに言う “私は昔から縁起の悪い女” という影のある女性。 ソクチュンのストレートな求愛を、どこまでも一人のお客の要望として受け流してゆく。 その二人の愛情の真意を巡っての激しい“言い合い”の場面として、特に印象的所が二つある。 最初は結婚を彼が彼女に申し込み所。 彼女が出張売春のホテルの館内のらせん階段からおり、彼が追いながら叫ぶ。上からカメラが俯瞰で見下ろし、その円上に回り落ちてゆくなかの激しい言い合い。『こんなに真剣なのに、どうして分からないのだ!』 『おじさん、私はあんたには不似合いの女、指図しないで!』 それともう1つは、後半彼女が実はエイズ感染していて、本人も彼も知らずに結婚し、大ショックな展開状況の上での最後の見せ場。ちなみにウナはソクチュンを夫と認めてからは、おにいさんと呼ぶ。 それは幸せの結婚生活の絶頂の時、元のダンナと称する、病的な暴力男が現れ、この男に金をせがまれソクチュンは牛を売って大金をこの男に渡す。もう二度と顔を見せるなと言いくるめて。 しかしそんな迷惑を掛けては、もう一緒にいられないと、ウナは家を出る。 再び元夫に払った金をソクチュンに返すために、客との性交しょうの日々。この時点では彼女自身エイズ感染していることを知らない。 しかし保険所から彼女を捜索、エイズ感染者が性交しょうした事実が、警察にマスコミにもばれて総すかん。逮捕され刑務所に。障害罪売春禁止法の刑に処される。 しかしソクチュンは家族にも知人の反対にも気持ちを変えず、面会に何回も出向き、そのたびに、彼女から拒否され、やっと再会出来た場面。面会室をよじ登っての求愛は、さすがに見せられた私も涙が滲んだ。 前半のラブコメの明るい作調から一転して、後半のエイズ感染をからめての暗いテーマの社会的拡大展開は、さすがに一筋縄では終わらない韓国映画。 保険所、警察、TV・マスコミなどの扱い。特に家族の身内の反応、主人公の兄、母親の対応。またそれまで普通に接していた知人達の態度の変化などは、いかにもありそうな言動であった。そんななかだからこそ、個人の二人の愛情の強さが際立つのかもしれないが。 しかしヒロインのエイズはどうなったの?実話だって。 ひどくならないで済んだの? 外に感染しなかったの? 気になるなぁ。
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