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ジョージ・フロイド氏暴行殺害事件後に短編の動画配信が行われたので、てっきり「SKIN」は白人至上主義者vs黒人運動家の構図メインの作品なのかと思っていたが、全然違った。 メインは白人至上主義組織内の腐敗した思想と、現在もこういった常軌を逸した組織が平然と存在すること、そして、いかにしてそこから脱却するか、というテーマだった。 だから、白人側からの視点が主。 まずは短編から。 こちらはジョージ・フロイド氏の事件後の世の中に寄せた内容だった。 白人至上主義者の男とその妻、息子、そして同じ思想の仲間たち。ある日スーパーで黒人を集団で暴行したことにより、その男は謎の黒人集団に拉致されてしまう。 10日後解放されたその男は、タトゥによって全身を黒くされ、まるで黒人のような姿に。 そのまま家族の元へ帰るも、肌の色だけで人を判断するような環境で育てた息子に背後から銃殺されてしまう… 本当に怖ッ!!!と思った。 差別は自分の家族をも壊し、自分の命さえ危険に晒す、という強烈な警告だ。 人種差別は相手を傷付けるだけでなく、自分の身をも滅ぼす愚かな行為だ、ということかな。 次に長編(本編) そもそもジェイミー・ベルの凄まじく変わり果てた容姿に驚き、観なきゃ!と思った作品だった。 マッチョな身体にスキンヘッド、全身何かしらの意味を持つタトゥ… しかも実話に基づいていて、ご本人も本当にああいうタトゥ顔面に入れてたみたいで…言っちゃ悪いけど、何かのギャグかな⁈と思った。 それくらいこういった白人至上主義組織の思想はバカげている、というのが正直な感想だ。 あの白人至上主義組織内の人間関係は本当に異常だと思った。 まず一番気持ち悪かったのは、ママ。 組織の人間を我が子のように見てるテイだったけど、あれは違う。 ブライオンを半分は男として見てるように感じた。あんな口にキスしないよ…熱烈な。 でも半分は母親として庇護しようとしてるから、なんとも危うい感情なんだなと思った。新人くんに対してもママは意味有りげに振舞っていたから、組織員全員にそういう感情を持っているのだろう。特にお気に入りはブライオンだったんだろうな… ブライオンが600日以上かけて全身のタトゥを消していく過程と並行して、自分の行いに疑問を感じ始め、愛する人のために組織から足を洗おうと苦戦する姿が描かれているのが面白かった。 ラストのタトゥ完全除去と、組織からの完全脱却が重なるところが綺麗にハマってた。 ああいう構成は好きだな… 情景描写も、ワンシーン素晴らしいなと思うところがあった。 パパたちがイスラム過激派組織員(本当かは定かでない)を逃したブライオンを責めるため、ISの男達を車内に縛り付け、燃やしてしまうシーン。 それを空撮してるんだけど、燃えている車1台だけが黒で、その周りにあるたくさんの車は屋根に雪が積もっていて白い… これはやはり世界の差別者、被差別者の構図を象徴しているのかなと思った。 最後に、ブライオンはどうしてジュリーに惹かれたのかな?てのを、ずーっと考えてるんだけど、なかなか結論が出ない。 物語冒頭、白人至上主義者たちの集会で、お金のために3人の娘たちをステージで歌わせようとやってきたジュリーだけど、ブライオンはほぼ一目惚れのように見える。 ジュリーの、娘への愛情はあの時点ではまだブライオンはそこまで知らないし…真の家族の愛情に飢えていたブライオンってのは分かるんだけど、なぜ一目惚れするほどジュリーに惚れたのかは、未だ謎…。 しかしこの話の唯一の救いは、ジュリーがスーパー強い母ちゃんだということだw ブライオンの元カノと殴り合うシーンは爽快感すら覚えた。娘たちも、やっちまいな!的な応援の仕方w 観ていてとても辛く、苦しい映画だったけど、今観る価値がある作品だと思った。いろいろ考えるきっかけをもらえた。
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