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アートなシーンの置き方、役者の自然な演技の引き出し方、音の効果的な使い方、ストーリーの起伏の作り方、それぞれにおいて監督が素晴らしい。 海に沈んでいくコウや、2人乗りの自転車が闇に消えるシーンを、コウの心の闇に重ねている。夏芽はペディキュアを黒に塗りながら、“白”を象徴としているコウからの脱皮、1つ赤に塗る事で、大友への心の動きを表現している。などなど、監督が“色”を象徴的に操っているのがスゴイ。無音や、荒々しい音、または夏芽の気持ちをそのまんま歌詞にしたような可愛いポップソングを使い分けていて、音の使い方も妥協してない。 原作は見てないが、普通の少女の恋愛モノで終わるかと思いきや、ラストに大きな機転もある。その機転のおかげで、タイトルの「溺れるナイフ」の重みがぐっと増している。 編集を加えずに、役者の思うがままの動き方を自由にさせているシーンがいくつも登場する。小松菜奈・菅田将暉の好演も光るが、監督が役者に、役になりきらせて一気に撮っているように見える。だから、見ていて引き込まれるし、アートを重ねるシーンとうまく緩急が出来て、見飽きないのだと思う。 原作の骨太さと監督の技術が上手く噛み合った、とても素晴らしい映画。
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