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世界のキタノが放った空前の大ヒット作。 暴力描写の多い監督だが[時代劇]というフィルターが緩和して良い意味で万人向けになる。作家性の相性が良いと発見した。 監督いわく[初めて娯楽に徹した]との通り一級のエンターテインメント。全て自身が演出した殺陣もキレがあってサマになっていた。悪党を石灯籠ごと火花を散らしてぶった斬るシーンの超人ぶりはまさに最強。 大団円のタップスは映画史に残る名シーン。 歓喜のパトスが最高潮に達する時、暗い宿命に囚われていた姉弟の魂が解放される。 喝采を背にして一人去る市の向かう先には、最後まで姿を隠していた大悪が対峙する。 物語のクライマックスがタップの最高潮と重なり合う。映画のダイナミズムに心が震える。 天才、北野監督がラストで見せた独自な仕掛けにも驚いた。賛否分かれるところもあるが、私は両手放しで喝采を挙げたい。[見えない]から見えてくる人の心がある。目が開いていても見えないものは見えない。 隠れた危険、悪意、さりげない優しさ、座頭市を前にすると人の心は裸に見透かされるのだ。 見事です。 また、監督は本作においてコメディアンとしての本領も発揮しており、随所で絶妙な笑いを挟んでくる。大物すぎる本人がやるより笑えるかもしれない。ダガルカナル タカが可愛い過ぎる。たけしの分身としてのおいしい笑いが印象的だった。 監督いわく殺陣シーンより笑いの演出の方がはるかに気を使ったとのこと。 [座頭市]という、ご本家 勝新太郎の大看板を背負えるのは[怪物的な凄み]と[親しみやすい温かさ]のある大物でなくては成り立たない。その後、新たな座頭市として綾瀬はるか(完全に別モノ)や香取慎吾(弱すぎ)も挑戦していたが役者が不足すぎた。 北野監督にはもっと娯楽時代劇を撮っていただきたい。とりあえず次あたりは[シン・タケちゃんマン]でお願いいたします。
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