Comment
2019年52本目はインディペンデントながらそのテーマの過激さが話題を読んでいる『岬の兄弟』。各方面の注目の高さゆえか、劇場はほぼ満席でした。 兄妹二人の馬鹿馬鹿しい会話のやり取りや、ところどころに散りばめられたユーモアのおかげで幾分軽妙に仕上がってはいるものの、彼らの置かれた境遇は救いなどどこにもありません。兄の良夫が追いつめられて遂に許されない決断に至るまでが、これ以上ないほどみっともなく卑しく下品に描かれていきます。演者二人のパフォーマンスのおかげもあり、高い熱量を肌で実感できる意欲作でした。 ただ、これがデビュー作とあってか正直荒削りなところも。貧困や格差社会に留まらずありとあらゆる問題提起を詰め込みすぎていて、だんだん話がどこを目指して進んでいるのかがわからなくなってきますし、最後も中途半端になってしまった感じが強いです。 それでも今の邦画では絶対に見られない過激さは折り紙つきですし、こういう映画を東宝や松竹みたいな大手が拡大公開する気概を見せないと、日本映画はいつまでたっても漫画とテレビドラマ頼みの低水準をキープして終わりでしょうね。
13 likes0 replies