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直近で劇場公開された新作をレビュー、今回取り上げるのは『プラットフォーム』。スペイン発の一風変わったシチュエーション・スリラーです。 ------------------------------------------------------------ 古今東西、密室・棺桶・電話ボックス・車のトランク…様々なソリッド・シチュエーション・スリラーが作られてきました。『プラットフォーム』に登場するのはそのどれにも当てはまらない、シンプルな作りながら、どこか近未来を思わせるオブジェクトです。この全く新しい建物の構造や仕組みを考えただけで既に成功していると言ってよい1本でしょう。 ------------------------------------------------------------ 主人公が持ち込んだ「ドン・キホーテ」の本や333の数字など、哲学的・宗教的な問いを匂わせてはいるものの、ビル全体が示すのはあまりに分かりやすい「格差社会」です。最上階に位置する人間は贅沢なご馳走を食べられますが、どのフロアに誰が配置されるかは自分たちでコントロールできず、「見えざる者の支配」に過ぎません。加えてタチの悪いことに、建物に上りのリフトは存在しません。 ------------------------------------------------------------ 一度「下層民」となったら上に這い上がるきっかけは運に任せるのみ。恐ろしいことにこれが中産階級すら没落し、格差が広がるだけの現代そのものを映し出していて、私たちの暮らす社会に少々怖気がします。惜しむらくは設定を考えただけでゴールを迎えてしまったのか、終盤に向かうにつれて話がどんどん抽象的になり、上手く風呂敷を畳めていない点です。欲を言えばもう少し結論を具体的に見せてほしかったですね。
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