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原題は「The Leisure Seeker」、「レジャー・シーカー」でキャンピングカーの名称です。 老練の魅力たっぷりのドナルド・サザーランドとヘレン・ミレンが人生の終末期にキャンピングカーで旅をするお話。 イタリア人監督、パオロ・ビルツィ氏作品というのは驚き。 結末は賛否があると思いますが、なかなか味わいの深い作品でした。 キャロル・キングの曲「It's Too Late🎵」で始まるオープニング。 元大学教授のジョン(ドナルド・サザーランド)は認知症が進んでいる。 一方の妻エラ(ヘレン・ミレン)は末期のガンで先がない。 エラの入院に合わせ、二人で古いキャンピングカーで逃亡するかのように旅に出るロードムービー。 おしゃべりが止まらないエラだけどジョンの認知症の症状が出る度に心配でたまらない。 でもそこには愛もあれば苛立ちや怒りもあるのがリアルな描写でした。 確かに妻や子ども達の存在を忘れて、昔の教え子達をしっかり覚えているのは、エラとしては悲しすぎる。 でもジョンは悪気があるわけでもない。 文学を専攻していたジョンがヘミングウェイの作品をスラスラと暗唱するシーンは印象的。 そう、この旅のゴールはフロリダ、キーウェストの「ヘミングウェイの家」なのです。 道中、様々なアクシデントがあり、強盗に襲われた時に銃を構えるエラ。 ジョンに置いてきぼりにされ、バイクに乗って追いかけるエラ。 所々にヘレン・ミレンのカッコ良さがいっぱいでした。 (さすが英国淑女の気品溢れる女優で、今回のアカデミー賞のプレゼンター役も素敵だったな~) キャンプ場で毎晩8ミリ映写のスライドを観る二人…人生を思い返す素敵なシーンでした。 ジョンがこだわる「トランクス派かブリーフ派か?」とか、エラが初めて知るジョンの不貞とか、旅の途中はハプニングの連続でした。 でも結局、「一心同体だから置いておけない」…そんな気持ちだったのですね。 悲しいラストかも知れないけど、個人的には共感する生き方でした。 明るい曲で終わるのも救われる。 怒りや憐れみ、そして芯が一本通っているエラを演じたヘレン・ミレンの真骨頂の演技には満足です。 御歳83になられるドナルド・サザーランドの魅力も溢れる作品でした。 もはや、ヘミングウェイのよう。
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