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星ゆたか

星ゆたか

4 years ago

3.0


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Race

Movies ・ 2016

Avg 3.3

2022.5.11 *ジェシー・オーエンス(1915~1980)*金メダリストのアメリカ黒人陸上選手。 あの世界の暗黒史の怒涛の幕開けとなった、1936年のベルリンオリンピックで四冠に輝き、ヒットラーに苦々しい思いをさせた人物。 この映画日本では2016年の8月11日に、リオオリンピック関連作品として公開されたが、逆にその慌ただしさの中あまり正当な評価をされなかったのではないかと思う。 しかしながら時代背景のセット、衣装メイクの再現。登場人物の物語構成の脚本・キャスティングなど実に綿密念入りに構築されていて、とても見ごたえがあった。 今回やはり日頃、映画を見続けてきたからこそ、また知り得た世界の偉大な人物の足跡として多くの人に薦めたい作品だ。 彼は貧しい五人家族の長男として、オハイオ州クリーブランドに生まれた。 五歳の時死にかけ、母親に『お前が助かったのは、偉業を成す運命から神様が生かしたのよ』と言われる。 六歳で一日50キロの綿を手をボロボロにして積んだという。(後に出会う大学のコーチに、日々の『努力はできるか』と生き方を聞かれこの時の話をする) こんな具合に幼い内から、生活の自立心を身に付けていたから、18歳で大学生活に向かう時には、美容師を目指し見習い中の恋人との間には、正式な婚姻ではないが女の赤ん坊もいた。(大学選手派遣生活の中では、浮気事件もあるが誠実な反省対応で乗り越える)そして旅立ちの時には少ないけどと言いながら、父親と恋人にお金も渡してゆく。 そしてこの人物に特に感心したのは、多分人種差別の世の中の慣わしに、苦しめられてきたからなのだろう。白人の無しつけな扱いに決して感情を乱すことなく、やり過ごせる所だ。大学のアメフト部の連中に、シャワー使用の順番を無理押しされた時。 またラスト近くの、あの金メダル獲得の100万人の凱旋パレードの、後の祝賀会の入口の主賓の扱い。 『決まりですから、裏口の通用路からお願いします。』 お互い正装したコーチ夫妻同士と入ろうとして。黒人の彼らだけ裏側へ。 憮然としながらも、『なかで会いましょう』と冷静に応えられる。実に大人の対応だ。この場面ではその後、建物の裏の食材を運ぶエレベーターでサインを求める白人少年に、にこやかに応じるオマケのシーンがとてもイイ! この映画では、かたやドイツ・ナチズムのユダヤ人撲滅思想、黒人人種差別(これはアメリカ国内でも同じ)という大きな暗雲の動めく背景の中、オリンピックに参加してゆく人物に、多いに見るべきものがある。 まずコーチ。運動選手の指導に夢中に成りすぎ、妻子とは別居中。しかし主人公の才能にほれこみ、何回か衝突を重ねつつも信頼関係を築いてゆく。肌の色が違うからと、偏見を持って人を見ない。人と人、心と心が通い合えば、お互いを尊愛しあえる。 オリンピック競技中では、走り幅跳びの欧州チャンピョンとの友情。 ドイツのカール・ロング選手は白人だ。11万人の観客の前でドイツの威信をかけて開催されているオリンピック決勝で、しかもあのヒットラーの目前で、正々堂々と勝負し、負けても黒人のオーエンスと肩を組みながら、相手の勝利を讃えられる。(彼は祖国愛を持ちつつも常軌を逸した国の方針に反抗し行動した結果、皆に未来を棒に降ったと言われ、その後全線に出兵させられ戦死した) また「民族の祭典/美の祭典」(1938年)というベルリンオリンピックを開催中同時撮影した作品で、世界記録映画史に名前を残した女流映画監督レニ・リーフェンシュタールの描写も中々捨てがたい。 冷徹なゲッベルス(当時宣伝相)と、米オリンピック開催委員会会長との間に入って通訳をしつつも、自らの映像作家の信念は貫き通す。(ドイツの負けそうな競技は撮影させない指令に反抗し、計45台のカメラを駆使し撮影続行) ジェシー・オーエンスのその世界記録は25年間破られなかったが、ホワイトハウスの公式声明はなかったとか。 その後母校の大学で指導者として多くの世界チャンピョンを送り出した。そして死後の1990年その功績を讃えられたという。