この重苦しい世界に、昼間からの時期外れの花火。 それが意図するものとは。 もがいたな。もがいたな。すごくそう思った。

犯罪ミステリーであり、内容も凝ってはいるが、観終わっての収束感が、不思議とない。恐らく、主人公、ヒロイン共に、最終的には何を考えて行動しているのか、解りにくいせいだろうと思う。 また、「魔性の女」モノであるが、確かに美人ではあるものの、何というか独特の貧乏くささがあって、変にうらぶれた感じのヒロインである。 さらに、主人公はオーラがあまりなく、その辺のただのオッサンのような感じで、これもまた甚だ頼もしくない。 要するに、映画的なゴージャス感が全くない映画で、それが狙いなのだろうが、結果的には観客を選んでしまうと思う。 舞台をクリーニング屋などではなく、例えばしやれたブティックあたりにし、主人公とヒロインを陰のあるクールな美男・美女にして、感情を解りやすく、しかもスタイリッシュな演出をしたら、シャープな香港ノワールが出来たと思う。 本作の場合、リアル感を出すための演出であり、それをどうこう言うのは詮ない事ではあるが、割と凝ったストーリーなので、ちょっと残念な感じがした。

ディアオ・イーナン監督の７年ぶりの作品にして、ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得したサスペンス。 本作はいわゆるファムファタールものなんですが、ヒロインを演じるグイ・ルンメイは決して「美人」ではありません。しかし幸薄そうな顔立ちは男の庇護欲を刺激するに十分であり、出で立ちや仕草ひとつ取っても妙に艶かしいのです。彼女の存在感が曖昧模糊としたこの映画に一輪の花を添えていることは間違いありません。 反してストーリーは批評家受けしそうな内容であることはわかるんですけれど、登場人物の心情についていけないシーンが多すぎて、気が散る一方です。ヒロインもそうですが一番理解しがたいのはリャオ・フェン演じる刑事でしょう。 映画の冒頭で離婚を迫られた妻に対し暴力的な行動に出る野蛮なこいつは、事件を捜査する過程でも何の説明もないまま突飛な行動を頻発するため、「考えるな！感じろ！」と常に言われているようで非常に疲れました。 「理解できないのが人間なんだよ」とでも言いたいのでしょうが、正直なところ退屈で刺さらない一作です。