レビュー
2019年45本目はナチスドイツ大戦下で実際に起こった事件をドラマにした『ちいさな独裁者』。 こんな話が本当にあったなんて信じがたいですが、アメリカのスタンフォード大学では志願者を看守役と囚人役にわけて演じさせる実験を行ったところ、看守役を演じた人間が人を暴力で支配する結果となり悲惨な結末を迎えました。この顛末は後に『es』という映画になっていますし、心理学者のミルグラムによる実験はあまりにも有名で、「人は権威に盲従する」ことを示す実例は数えきれないほど存在します。 主人公のヘロルトもまた同様で、大尉の服を身に付けることで仮初めの権力を手にし、自らの人生を狂わせていきます。面白いのは本作がその過程を残酷な虐殺シーンによりおぞましく描こうとするだけでなく、時に皮肉や乾いた笑いを交えて滑稽に見せようとする点です。 面構えからして何の威厳も感じさせない童顔なヘロルトの下に次から次へと部下が集まる序盤や、彼のために開かれた晩餐会での居心地悪さ抜群の喜劇シーンなど、理性を失った状況下で人が見せてしまう愚かさには苦笑いと失笑の連続でした。 ナチスを主題として扱った映画にしてはかなり娯楽色の強い話運びで取っつきやすいのでは。ただ、なぜオリジナルがモノクロであったものを日本だけがカラーで上映したのか意味がわかりません。人離れを懸念しての決断だとすればそれこそ愚かな行為だと思います。
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