レビュー
この映画「化石の森」は、石原慎太郎の同名小説を山田信夫が脚色し、篠田正浩が監督した、現代の青春と母と子の血の問題を描いた作品だ。 主人公の緋本治夫(萩原健一)は、大都会のある大学病院で病理学を専攻しているインターン。 彼は、医学の権威を背負って立っているような、尊大な教授たちに反発を感じている。 ある日、治夫は高校で同級だった井沢英子(二宮さよ子)と再会し、一緒に酒を飲んでいるうちに、互いの肉体に陶酔した。 英子は、都心の地下街にある高級理髪店でマニキュア・ガールをしていたが、その店のマスターにいいようにされ、彼を憎んでいた。 治夫は、英子に指示し、毒薬をマスターの爪にしみこませて殺してしまった。 完全犯罪に酔う二人だったが、その陶酔の去った後、英子は女房気取りになり、二人の間には亀裂が生じていった。 治夫は、そこで夫のある塩見菊江(八木昌子)に接近した。 一方、治夫には郊外のモーテルで働く母親・多津子(杉村春子)がいたが、かつて母親の姦通の現場を見て以来、治夫は憎悪の念を抱いていた。 だから、多津子が治夫と一緒に生活したいと願っても、彼は拒否していた。 女性関係はもつれにもつれ、菊江の夫が嫉妬のあまり、英子に全てをばらしてしまったのだ。 英子はマスター殺しを多津子に打ち明け、さらに警察にも知らせようとした。 そうした英子を多津子は毒殺し、それを治夫に告げる。 こうして多津子は、息子と同罪になれたことを喜ぶのだった。 人間関係のどろどろとした凄まじさが、メロドラマティックに描かれていたが、石原慎太郎の原作にひきづられ、篠田正浩監督の本来の魅力は、やや影が薄い感じだったと思う。
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