レビュー
チェルノブイリ原子力発電所事故の際、事態を隠蔽しようとするソビエト政府の対応や、事故の被害や影響の拡大を抑えようと奮闘する人々を描いた超濃密ドラマ。自分は『チェルノブイリ原子力発電所事故』を歴史の一つの単語とでしか認識しておらず、特に興味があったわけでもなかったのだが、本作の評価がとんでもなく高かったのと、5話完結で短いと聞いたので見てみることにした。これは見て良かった、というか見るべきだった。重苦しい雰囲気、骨に響くような重低音のBGM、爆発の惨劇のリアルな描写、緊迫感溢れる目が離せないシーンの連続で、1話目から自分の心を鷲掴みにされた。事態の深刻さを理解していない上層部が安易な行動をとったり、平然と隠蔽しようとする様子にイライラするのだが、レガソフ博士を中心に事態を究明し、ひたすらに対策を練る様子には感動した。また、彼だけでなく、ホミュック博士やシチェルビナ副議長、排水作業を行った3名の技師、トンネルを掘るために動員された炭鉱労働者、被爆者を治療する看護師、様々な職種の人々がそれぞれに近い死を悟りながらも懸命に行動する勇敢な姿勢には胸を打たれた。沈静化のためにこれだけの犠牲を払ったのだと思うと心苦しくなったし、決して彼らの存在を忘れてはいけないと思った。実話ベースの作品だと、やはり物語に起伏が少なくなったり、演出が地味になってしまうし、かと言って脚色しすぎると事実とかけ離れすぎて興ざめしてしまうことが多いのだが、本作はその絶妙なラインを保っており、なおかつドラマとして成り立っているのが凄い。そもそも脚色をする必要があまりないほどこの『チェルノブイリ原子力発電所事故』には壮絶な深いドラマが詰まっていたのかもしれない。  一話一話に確実に刺さるものがあり、途中でダレることなく最後まで引き込まれる。まさに傑作と呼ぶのに相応しい作品だと思うので、この惨劇を知ってもらうためにもぜひたくさんの人に見てほしい。
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