レビュー
【視覚的殺意映画】 見えない何かに襲われ続ける恐怖。錯乱を助長する音の効果も手伝い、何もない空間の映像が、“視覚的な”殺意に満ちた恐怖の絶頂に変わる不思議。どんでん返しや衝撃のラストも含め、脚本力も光る。 ◆概要 『透明人間』('93)リブート作品。 原作:H・G・ウェルズ『透明人間』(1883) 製作:「ゲット・アウト」ジェイソン・ブラム 監督・脚本:「ソウ」シリーズ リー・ワネル 出演:「アス」エリザベス・モス ◆ストーリー 富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜脱出を図る。エイドリアンは自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残すが、やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こる。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……。 ◆感想 透明な何かが襲ってくる恐怖。家族が襲われ、大切な人が襲われ、冤罪で収監された刑務所にまで襲ってくる恐怖。そしてラストのどんでん返しからの衝撃の結末。もう完全にサイコホラーの当たり映画。 ◆視覚的恐怖 透明の何かが襲ってくる恐怖が、本当に透明人間なのか?薬漬けの主人公の妄想オチなのか?じわりじわりとその妄想が杞憂に変わっていく。気配がし、足音が聞こえ出し、、あの、何の変哲もない部屋の映像が、どこかに何かがいるのではと自然に勘ぐってしまい、恐怖に思えてくるのが不思議。足跡がつき、物が動く。殺意が視覚的に表現される、この映画ならではの表現がとても興味深い。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆ピカイチ 現れる職員が次々と襲われる刑務所のワンカット長回し。一部見え隠れしながらも、その透明人間の前に全く無力な人々が無残に殺されていくのは、この映画ならではなシーンでもあり、この映画にしかできない映像表現。まさにピシャリそれを見せてくれたことに感謝。 ◆どんでん返し なんとか倒せた透明人間が、トムだったという衝撃。この映画がリメイクではなくリブート(前作と必ずしも同じあらすじではない)とされている訳だ。この“透明人間スーツを着るのは必ずしもエイドリアンではない”という展開にする事で セシリアがスーツを着る、という斬新なラストに繋がる訳で、これぞ脚本の妙。素晴らしい構成でした。 ◆音 映画に多用された、あの重低機械音。音も右から左から音がグルグル行き来し、ステレオ効果を存分に活用して、聞いているこちらが錯乱するのを助長する感覚。個人的には、「ジョーカー」に次ぐ、音の重みが映画に拍車をかけまくっている作品だった。何もないはずの部屋の映像が恐怖に変わる緊張感を倍増させてたと思う。 ◆ ゾクゾク感が終始続く、当たり映画でした。「ゲット・アウト」が大好きなので、もはやブラムハウスにハズレなし。ジェイソン・ブラムの歴史にまた一つ名作が名を連ねた感笑。興収がだいぶいいそうなので、次回作の可能性も高い。期待大! ◆トリビア ○元々ユニバーサル・ピクチャーズが構想したダーク・ユニバース(過去のホラー映画のキャラクター達を集結させる)に登場するはずだったが、「マミー/呪われた砂漠の王女」でコケたため、単発リブートとして本作も舵を切られた。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/透明人間_(2020年の映画)) ○ 透明人間を演じるオリバー・ジャクソン・コーエンは、蛍光グリーンの赤ちゃん用パジャマを着て撮影した。「あれほど恥ずかしい思いをさせられたことはなかった。セットにいる誰もが僕から目を逸らすんだ。」(https://news.yahoo.co.jp/articles/9d5b87e54195e3bce5f19a7960adf4f6673e3c82) ○ 本作は、製作費700万ドルに対して、2020年7月時点で、1億2千万ドル以上の世界興行収入を突破。次回作が期待されている。(https://theriver.jp/invisible-man-sequel-possibility/)
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