レビュー
意識的な自我は無意識の自分と表裏一体! 戦後イギリスを舞台に、没落した貴族と彼女たちに病的なほど惹かれていく医師との関係性を描いた、『ルーム』のレニーアブラハムソン監督による静謐なミステリーホラー。『ルーム』は未見だけど、本作もある意味では監禁系のお話だから、この監督さんきっと監禁映画好きなんやろね😅 お屋敷の美術も去ることながら、固定カメラを多用し、その素早い切り替えによって一場面を連続性のある一つの流れとしての温度を維持しながら見せるのがオシャレ。その合間に引きの固定カメラで全体を捉え「空間の中の人物」という箱庭的な閉じた枠組みと、その枠組みに囚われ続ける人々の営みを語る。更には局所的に主人公の顔のドアップを挟みこむことで明らかな温度差を映像に与え、その緩急で異常の進行を予感させ、また本作の核心部分にまで手を伸ばす。繰り返しになるけど、ほんと凄くオシャレ!そんでうまい! いわゆる「信頼できない語り手」な映画で、貴族に呼ばれた医師の主人公がそこのお嬢様に一目惚れして、ゴリゴリ押してくうちに怪奇現象に見舞われるというゴシックホラー的な内容。とはいえ、怪奇現象は抑え目。どちらかというと、主人公とお嬢様の微妙な距離感でつかず離れずする恋愛ドラマ的な要素が強い。 主人公の医師を演じるドーナルグリーソンが、常にポーカーフェイスな演技でストーカーばりにしつこく屋敷のお嬢様に「俺と結婚してくれ」と迫るのがキモい…😱しかも「少し待って」と言うお嬢様に「じゃあ6週間後に結婚な!」と期限まで指定して来るイカれ具合。こいつヤベェな😇 貴族が没落し、労働者階級が台頭していく。そんな時代的な変遷への迎合と嘆きが本作の根幹にはあるのだろうと思った。貴族というある種の英国らしさを英国自身が失っていくことに対するアイデンティティの喪失的な国民感情を主人公が代弁し、病的なほどしつこくお嬢様に求婚するという行為は、彼の愛国心的憧れの指標として機能しているのではないかと。知らんけど🤣 どちらにしても偶然と必然の境界を曖昧にする作風が解釈の幅を広げていて、特に気になったのが犬の使い方。とある事件に大きく関与するのだけど、その前に彼を迎え入れる役割を担うのも犬。真っ直ぐ進むという選択肢(ロンドン行き)は何度も提示されるのだけど、ここでもあえて道を逸れ出会す。犬と彼は心的に同調した存在として描いているのではないかと思った。そして巣立つ時期なのに戻ってくるツバメというのも同様の意図が読み取れるように思う。 でも、そんな解釈は置いといて、上品な映像が見てて心地よいなかなかの良作!!Amazonプライム限定配信っぽいけど、アマプラもやりますね👍
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