レビュー
良い映画観たなぁ。 役者、カメラワーク、照明、美術、衣装、映画を構成する様々な要素が全て良かった。個人的には映像が良かった。どのカットにも陰影をつけた画はかなりのこだわりを感じる。室内のシーンでも様々なライティングにチャレンジしていて、何度も撮影がある場所にも関わらず、同じライティングはなかったんじゃないかと思うほど、彩り豊かだった。その一方、頑張りすぎてて、芝居よりそっちに目がいきがちになってしまうのは、スタッフの若さゆえなのか。 しかし、今回、何よりも誉め称えたいのは役者だ。服部樹咲。この原石をよく発掘した。この子は本当に目の演技が凄まじい。前半はほとんど口を開かない。粘っこい子どもならではの表情をするが、後半は一変した。特に踊っているときは、ハッとするほど大人っぽい顔をする。長い手足にみとれた。今後、期待大の女優だ。 そして、草彅剛。俳優草彅剛がここまですごいとは思わなかった。どのカットにも隙がない。完全にトランスジェンダーだ。細かい所作にもこだわっていたんじゃなかろうか。色気がすごい。本当に美人だった。母親になっていく表情も良い。影を背負った冷たい表情から、徐々に慈しみのある母親の顔になっていくのが印象的だった。言葉の語尾にも徐々に温かみが出てきているのも良かった。 しかし、美しいけど、残酷な話しだ。可愛い一果の為に母親になることを決心し、体も女に変えた凪沙。それは衝動的な行為だったんだろうけど、本当に求められていたことはそこじゃない。一果が卒業するまでの短い期間に、彼女は大きく成長したが、一方、凪沙は変わり果てた姿になっていた。短いが2人にはその離れていた期間が、距離が、決定的だった。凪沙は一果と一緒にいるために、自分を変えたが、それは一果が望むべきものではなかった。『頼んでない』と彼女は何度も劇中に言ったが正にその通り。一果が望んでいたのは、女の凪沙じゃない。ありのままの凪沙だったのに。それに気づかなった2人のずれに胸が苦しくなった。2人はただただ2人でいることを願っただけなのに。 でも、一果は凪沙が与えてくれた愛情で大きく羽ばたいた。凪沙がいたからこそ彼女は変われた。凪沙の愛情は2人のいく末を大きく変えてしまったけども、決して無駄ではなかった。最後のシーンはただただ泣けた。
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