レビュー
dreamer

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4 years ago

4.0


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御法度

映画 ・ 1999

平均 2.9

"滅びゆくものの美学を描いた大島渚監督の「御法度」" この大島渚監督の映画「御法度」は、映画的興奮が全編に満ち溢れた、極めてスリリングで刺激的な映画です。 アクション、ユーモア、ロマンス、そして人間ドラマ----、これらの要素がバランス良く散りばめられ、緊張感を持続しながら観る事が出来た、そんな映画でした。 幕末の京都を取り仕切る新選組に、剣の使い手二人が入隊します。加納(松田龍平)と田代(浅野忠信)。 田代は美少年の加納に男色を覚えます。 やがて、隊士たちが次々と加納に懸想し、彼を巡って事件が起こります。 どろどろとした"黄色"が、この映画の画面の基調をなしていて、時折、それが先鋭的な"青色"に変わります。 光が通る昼間や屋内は黄色っぽく映り、一転して夜の闇は青色っぽく描かれていますが、その意味するところは実に深いものがあるような気がします。 この映画「御法度」は、幕末の一時期に咲いたあだ花とも言える、新選組という組織とそれに象徴される徳川幕藩体制が滅びゆく過程を追っていきます。 ここでの、"男色"は"滅び"の象徴として暗示的に描かれていて、生産する事のない愛、いわば滅びへと向かう快楽が、鉄の組織・新選組をその内側からじわじわと侵食していきます。 つまり、この映画の画面の"黄色"は、"腐敗"、"堕落"のイメージであり、"青色"は腐敗の後に広がる"荒涼とした虚しさ"をイメージしているのかも知れません。 加納が田代を斬る決意をする本願寺の境内の場面。強い西日が当たり、画面の"黄色"は最も濃密な色になっていきます。 そして、その直後、"深い青"が支配する河原でのクライマックスを迎える事になります。 新選組の中に、ただひとり滅びゆく事に自覚的な人間がいます---、土方歳三(北野武)。 彼の言動はいつもどこか冷めきっています。 理想論を熱く語る伊東甲子太郎とは対照的です。 そして、もうひとり、加納です。豪商の三男でありながら、望んで滅びの道を選ぶ加納------。 先々の身の処し方を聞かれ、「私に将来などあるのですか」と切り返す姿が、あまりにも凄絶でゾクリとする程の凄みがあります。 大島渚監督が全身全霊を込めて繰り出す、その太刀の切っ先は、司馬遼太郎の原作を突き抜け、滅びゆくものへのレクイエムとして、我々、観る者、ひとりひとりの心を突き刺すのです。 2016/04/22 by dream