
星ゆたか

マイスモールランド
平均 3.8
2023.4.29 在日クルド人問題をドキュメンタリー映画(社会問題として)でなく、日本における普通の青春ストーリーとして表明した注目作品です。 監督・脚本を川和田恵真さん(91年千葉生まれ)。 イギリス人の父、日本人の母を持つ。 是枝裕和監督率いる映画制作者集団 「分福」のメンバーの長編デビュー作品。 物語はクルド人の家族(父と妹弟の三人)と共に、幼い頃故郷を逃れ。 埼玉県の高校に通う17歳のサーリャを、ドラマの焦点として描かれてゆきます。 難民申請を続ける中、父は(どうも怪しい雇用主の)住居解体作業の仕事を同じ難民のクルド人四人とし、生活を賄ってます。彼の妻、家族の母親は日本にくる前にトルコ国内での争いの中亡くなっているらしい。 父親は40代、妹は中学生、弟は小学生という感じです。 このサーリャを演じる嵐莉菜さん(04年生まれ)は本作で数々の新人賞受賞の期待のやはりこれがデビュー作。 また家族を演じた父親、妹弟三人も全て嵐さんのそのまま家族という。とてもユニークな作品になっています。 父親がイラン・イラク・ロシアのミックス。 映画には出演してませんが母親はドイツ人と日本のハーフという日本国籍を得ている一家だそうです。 この映画の中では物語上、トルコ語を話す場面があるので、莉菜さんは父親の言語指導を仰いだとも。 物語は学校で仲良し三人組と流暢な日本語で冗談を言い合う普通の女子高生サーリャを中心に進められます。 彼女は大学進学の為にコンビニでバイトをそつなくこなし。 そこで知り合った同じ年の聡太君(コンビニオーナーの甥っ子役:奥平大兼さん、03年生まれ)とも仲良くなり。 次第に自分がそれまでドイツ人と言っていたけど。本当は難民申請中のクルド人であることを話せるような親密感を覚えていきます。 この辺の普通の高校生のデリケートな男女関係の雰囲気を、ゆっくり描いているのも好印象です。 そんな中これまでも何度も難民申請をして、その度に短期ビザで暮らしていましたが。 それが却下され〔仮放免〕という処置を下されました。 これは〔就労禁止〕〔移動制限:本作の場合居住の埼玉県内だけ〕などが課され。 まったく『じゃあ一体どうして生活して行けばいいんだ!』という法の仕組みです。 しかも父親の解体作業の雇用主が雲隠れし、父親も就労していた事実から。不法管理局に入管〈収容〉されてしまう事態になってしまいました。 小学校の先生になる為に進学したい希望も、難民だと受け入れる学校が限定されるということで推薦も高校側から却下されてしまいます。 急に生活苦の状況に。 アパート代2ヶ月分を払えないなら出て言ってと、オーナー(演じるは癌闘病中という小倉一郎さん)に言われる。 コンビニ(こちらの雇い主を演じるは藤井隆さん)も違法就労者雇用ということでやむなく解雇。別れ際に給料と精一杯のみやげを持たせてくれる。 やむなく友達のしていたパパ活で、カラオケまでの同意一万円にチャレンジ。 しかし相手が追加ハグ5分3000円、キス1万円とエスカレートしてくるので、その場から逃げ出してくることに。 そんな中での聡太君とサーリャちゃんの関係も、彼のクルド難民知識のレベルへの共感も含めて中々、切なくいとおしいです。見せ場としたら抱擁~キスと進みたい所を手を繋ぐ感覚で抑えました。 逆にやや内気な彼に対し、彼女は“クルド式挨拶”として、軽く両頬にキッス。 幼い小学生の息子は、言葉は話せるけど。自分の存在が周りと違うこと(アイデンテイテイ)で浮いていることで孤立していて。 『自分は宇宙人だ』と言ったことでさらに。無口になってしまったと。 学校の先生も心配の声を。 そんな息子に石蹴りの石を拾って。 父親がこの石もクルドの石も同じなんだと話す場面はいとおしい。 それは家族でラーメンを一緒に食べる所でも、さらにその意味が重複。 クルド人も日本人も美味しい食べ物を一緒に食べる至福感は同じなんだと見せる所に通じます。 同じように食事習慣といえば。 夕飯は家族が一緒に祈りを捧げて食べるのが、クルド人の誇りという風習などや。 また時々近くに住むクルド人が集まって、仲間意識を高める為に食事を愉快に共にする様子も忘れがたい。 監督は難民問題も含めて、この映画の中に描かれたことを。 『どうか他人ごとでなく自分ごととして受け止めて下さい』と話している。