
矢萩久登

木挽町のあだ討ち
平均 3.9
2026年03月08日に見ました。
2026年のベスト1が早くも確定!ミステリーと痛快劇、そして人情が交錯する時代劇の金字塔 公開直後から大きな評判を呼んでいる本作。 遅まきながら劇場へ足を運びましたが、平日の夜にもかかわらず場内は満席・完売という盛況ぶりでした。 『国宝』に続くヒット作という宣伝文句も、決して伊達ではありません。 物語の序盤は、木挽町の芝居小屋近くで起きた「亡き父の仇討ち」の真相を、加瀬総一郎(演:柄本佑さん)が金田一耕助ばりの鋭さで飄々と調査していくミステリーとして幕を開けます。 一芸に秀でた個性豊かな芝居小屋の面々への聞き込みは、それだけで濃密な人間ドラマ。 しかし、中盤からは景色が一変。 東映伝統の集団時代劇の系譜を継ぎつつ、『七人の侍』、『オーシャンズ11』や『ミッション:インポッシブル』を彷彿とさせる「ケイパー・ムービー」(プロ集団によるミッション遂行)の爽快さが融合した展開、二転三転するコンゲーム(騙し合い)の面白さに一気に引き込まれ、ラストは日本人の琴線に触れる多幸感あふれる人情の機微に思わず涙が溢れ出す、実に見事な脚本です。 黒澤明監督『椿三十郎』、岡本喜八監督『斬る』、市川崑監督『どら平太』の山本周五郎にちなんだ山本周五郎賞をはじめ「このミステリーがすごい!」などの主要ミステリー賞を総なめにした原作の強固な骨組みが、映画として完璧に肉付けされています。 配役も、驚くほど豪華で魅力的です。 森田座を支える渡辺謙さん、瀬戸康史さん、滝藤賢一さん、高橋和也さん、正名僕蔵さんという実力派のアンサンブルは圧巻の一言。 さらになにわ男子の長尾謙杜さん、「侍タイムスリッパー」の山口馬木也さん、イモトアヤコさんといったフレッシュな面々が脇を固め、特に沢口靖子さんの時代劇出演は『竹取物語』以来の「待ってました!」と言いたくなるような適役でした。 そして何より、本作の魂は北村一輝さん。 彼の凄みを再認識させられた本作は、まさにキャリアハイと呼ぶにふさわしい名演でした。 2026年もまだ2ヶ月を過ぎたばかりですが、早くも「今年No.1」を確信させる大傑作に出会えました。