レビュー
2020年84本目は、ドイツのベストセラー作家であるフェルディナント・フォン・シーラッハの原作を基にした『コリーニ事件』。 ------------------------------------------------------------ 全くの新人弁護士が大ベテランの検事とぶつかり合い、しかも扱う事件は容疑者に無罪の余地なし。おまけに殺人事件の犠牲者はかつての恩師だった…と、よくもまあここまでベタな展開を集めたなと言いたくなるくらいで、正直なところ他の法廷サスペンスと何ら変わらない進行に少々退屈です。序盤で驚きをもたらすのは、主人公が犠牲者の娘と肉体関係になってしまう点くらいでしょう。 ------------------------------------------------------------ ドイツを舞台にしているだけあって、犯行の動機も「それしかないよね」の凡庸さですし、運の悪いことにこのネタが今年公開のある映画と完全にかぶってしまってますから、既視感が尋常ではありません。ただし、完全に絶望的な状況から審理をひっくり返す終盤は、弁護士でもある原作者ならではの視点と問題提起が如何なく発揮されています。 ------------------------------------------------------------ 怨恨による殺人と思われた事件が、国中を巻き込んだ事態へと発展するばかりか、更に歴史の深い闇を暴き出していく。やっぱりドイツ国民にとって過去の体験は今も切り離して考えられるものではなく、延々と続いている出来事なのだと実感しました。その意味では、ドイツならではの風土や文化が感じられる一作になっているんじゃないでしょうか。
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