レビュー
欅坂46不動のセンター、平手友梨奈の初主演&初出演作。見に行かれるのは彼女やグループのファンがほとんどではないかと思いますが、単なる映画好きから見ての感想を。 漫画や映画を作るときに「舞台設定や背景」から決めるパターンと「登場人物」から決めるパターンがあるとすれば、『響』は完全に後者です。「型破りだが天才の女子高生小説家」という彼女ありきで描かれた原作をベースとした映画でも、その方向性は変わっていません。 映画『響』もまた、主人公を演ずる平手友梨奈を中心に回っています。もとより性格や考え方が似通っているせいなのか、佇まいや雰囲気が非常にナチュラルで初出演の違和感を全く感じません。監督も共演者もスタッフも徹底して両者を似せることに集中したのでしょう、ここまで境目なく漫画のキャラクターに寄せて描けるのは大したものです。 先日テレビで脚本に対し平手さんが「つまらない」とハッキリ言い切ったエピソードが紹介され、響同様に批判の的となっているようですが、補足が必要だと思います。最初の脚本では主人公が笑ったり友達と遊んだり、「普通の女の子」として描かれるシーンが全くなく、まるでモンスターのような扱いで違和感を覚えたそうです。この指摘は100%正しく、私が一番感心した部分でもあります。 響を単なる常識知らずの破天荒として描かず、日常の何気ないシーンやふとした感情の表現を交えつつ、何とか「人間らしい血の通った」キャラクターに仕立てているバランス感覚が非常に素晴らしい。 一方で先に述べたように個性的な主人公や魅力的な脇役の数々を土台として成り立っている『響』は、それを取り除いた時の虚無感が凄まじく、お話自体はスカスカです。明確なゴールもなくひたすら彼女の型破りな行動を見せつけられるだけで何をしたいのかがわかりませんし、根拠のない「天才」という言葉を乱発されても説得力が希薄です。また、出版業界や小説に関して偏ったいい加減な描写が多く、本をテーマにする意味あるか?と感じるほどです。 とはいえ、これは原作そのものが持つ問題だと思いますし、日本映画としては今時珍しい誠実な物づくりの姿勢が感じられる一作です。 それを平手さんの妥協しない発言や態度が呼び寄せたのだとすれば、良いものを見させてもらった私としては彼女に感謝しなくてはならないですね。
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