レビュー
2020年54本目は、レニー・ゼルウィガーが久方ぶりのカムバックと共にアカデミー主演女優賞を獲得した『ジュディ』。 ------------------------------------------------------------ 本当に知れば知るほどジュディ・ガーランドの身の上に起こったことは酷い話で、どこかで彼女自身にも中毒状態から脱するチャンスはあったにせよ、そのきっかけを作ったのは製作側の歪んだ心理に他なりません。まして最初に薬物を強制したのはジュディの母親であったわけですから、救いの手を差しのべる人間が当時誰もいなかったのだろうと思うと、いたたまれない気持ちになります。 ------------------------------------------------------------ 本作では過去の回想シーンを何度か挟みますが、ジュディの悲しい生涯を生々しく描き出すことはなく、もっとも印象に残るのはステージの上で華々しく歌って踊る姿です。これぞ舞台の上で輝き続けたジュディに対する最高の賛辞であり、それを渾身の力で演じきったレニー・ゼルウィガーのパフォーマンスには感嘆せざるを得ません。 ------------------------------------------------------------ 長年ステージから遠ざかっていたジュディが半ば強引に歌うことを強制され、最初はおどおどした目付きと震え気味の歌声だったはずが、観客の心をつかみ始めると共に力強い声へと変貌を遂げます。最終的には顔にも生気があふれ、伸びのある美声ですっかり舞台を支配してみせるのですが、この過程がレニー・ゼルウィガーの演技を通じてまざまざと伝わってくるのです。6年もの間スクリーンから遠ざかっていたとは思えぬ芸達者ぶりに、ひたすら驚愕しました。 ------------------------------------------------------------ ジュディ・ガーランドの歌声は死後50年経った今も、性別・国籍・人種・世代、あらゆる垣根を越えて人々に愛され続けています。誰よりも舞台を愛し、誰よりも観客から必要とされることを求めた彼女の理想は、永遠のものとして今後も語り継がれていくことでしょう。
いいね 17コメント 2


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.