レビュー
タイ・ウェストが監督・脚本・製作を務めたホラー映画。 プロット自体は「若者たちが人気のない場所に行って殺人鬼に次々と殺されていく」というこれまでに何度も観たことあるような古典的なもの。ただこれは敢えてのクラシカルなフォーマットであり、実際に本編も70年代ホラー映画へのオマージュで満載。しかし、そんな中でも新鮮味のある演出やテーマ性のおかげで、決して二番煎じに終わっていないのが見事だった。 特に見せ方の巧さは光っていて、池を俯瞰でとらえる緊迫感抜群のあのシーン、飛び散った血とともに画面全体が真っ赤に染まる演出等々、思わず目を奪われるような場面が多々ある。設定的には低俗B級映画と一蹴されてしまいそうだが、アート映画ばりにキマった画作りも随所に見られ、評論家から絶賛されているのも納得。このB級感とアート性の融合は本作の大きな魅力になっているだろう。 また、B級ホラー映画に無駄にエロいシーンが多いように、本作にもそういったシーンは割としっかりあるのだが、それがテーマ的に無駄なものになっていないのも新しい。主人公のマキシーンたちはポルノ映画の撮影をするために殺人夫婦の住む場所にやってくるわけで、本作の濡れ場やヌードも撮影の一環として行われるもの。つまり、この映画のエロはちゃんと物語的に必然性があるエロなのである。それだけでなく、彼らの生気にあふれたセックスは“若さ”の象徴であり、これが衰えて “若さ”を失った老婆との対比にもなっている。 若さに囚われた老婆をおぞましく、禍々しく描くことに一部で批判の声があるみたいだが、決して一方的に彼らを否定しているわけではなく、老夫婦視点の描写も入れることで彼らの哀しさや一途さが垣間見える作りになっていたので、私的にはそこのバランスは取れていたと思う。それでも、物語が動き出すまでが若干冗長だったり、その割には意外と殺され方があっさりな人もいたり、言いたいこともなくはないが、ジャンル映画としては標準以上に楽しむことができた次第。次作の『Pearl』も既に制作されており(こちらは前日譚らしい)、全体としては3部作になるそうなので、このシリーズには期待したいです。
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