レビュー
星ゆたか

星ゆたか

5 months ago

3.0


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2度目のはなればなれ

映画 ・ 2023

平均 3.7

2025.9.22 マイケル·ケイン(1933.3.14生)の俳優引退宣言作。 グレンダ·ジャクソン(1936.5.9~2023.6.15)の遺作映画。 物語は2014年6月オバマ大統領やエリザベス2世も列席した〖ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典〗に参加する為に老人ホームを抜け出した人物の実話からなる。 マイケル·ケインさんはその表情から、日本の笠智衆さん晩年の枯淡の域に達しかの様な感じで。 あのアカデミー助演男優賞2度受賞の[ハンナとその姉妹](86年のウディ・アレン監督の名作)や、近年のクリストファー·ノーラン監督の諸作とも違う、無駄なものを削ぎ落とした感を受けました。 片やグレンダ·ジャクソンさんは。 あの2度目のアカデミー主演女優賞の[ウィークエンドラブ](73)を確か東京の池袋文芸坐で後年見た、あの時の印象があって。最初(あれっ?)と思ったが。目元に確かに若かりし頃の面影があり。この作品中の度々の顔のクローズアップにも慣れ。役柄の人懐こいチャーミングな所も含め(大好きなおばあちゃん感覚)。 良い映画が遺作になったなと正直想いました。 この人調べた所によると1992年に政界入りで1度俳優引退していて。ブレア内閣の97年~99年の運輸政務次官を務め。2015年に政界引退するまで活躍されたんですね。以降舞台復帰し映画も本作含め2作に出演しておられます。 イギリス·ブライドンの老人ホームに住むバーナード&バニー夫妻。共に足腰が大分弱っている(妻は持病の心臓発作が時々)が。口手八丁は達者。施設の世話人にもそのユーモアが好かれていた。 そんな時バーナードはノルマンディーD作戦記念式典の申し込みに遅れ、半ば諦めていた。そんな夫の気持ちを汲んで“式典参加”の言動の後押しをしたのが妻のバニー。 想えばあの戦時中の“はなればなれ”の今度は2度目の覚悟であった…。 この映画に似てやはりイギリス映画で大ヒットしたという。妻を残しての老人ロードムービーに[ハロルドフライのまさかの旅立ち](23)がある。あちらは死期が迫るかつての女性同僚に想いを伝えるべく。思いつきの突発的言動で。お金ももたず800km先の病院へ色んな人の助けを借りて完行する話。会いに行くのはいいけど『歩行でなく交通機関を利用する計画性が欲しい』が最初の印象で鑑賞しなかった作品だ。この行為の妻の反対もその理由の大きな1つ。 それが本作では妻が、長い間夫の心の底に淀んでいた過去の記憶に決着を付ける為にも『そうする事がいい』と後押しする理由があった所が良かった。 更にこの映画の好ましい所は。 彼の周りに登場する関係者が皆気持ちのいい人ばかりであった点だ。 まずその妻を始め、施設の所員(黒人の若い女性や)。 そしてイギリスからフランスへ渡る船で彼の車椅子を押す黒人青年。アフガン戦で片足を義足にした帰還兵士。 それからやはり船で式典に参加する元空軍の老人アーサー(学校の校長上がり)。 バーナードが式典参加のチケットがなく所持金も少ないと察すると。話し相手に同室をと申し出してくれる。 彼はあの戦時中、弟の帰還途中の街を空軍パイロットとして銃撃し。『もしかしたら自分が弟を殺したという』後悔の想いを引きずっていた。 バーナードも同僚が一足先の上陸作戦の戦車で命を落としていて。彼に実家に届けて欲しいと頼まれていた遺品(小さな飴缶に入れられた)をずっと保管していた。 彼を死なせた事、守れなかった悔いの想いはバーナードもアーサーも同じ。 バーナードは彼とアーサーの式典チケットを。 滞在するホテルの食堂で一緒になったドイツ人退役軍人グループの2人に渡し。彼らと手を重ねる。戦争で受けた傷心は同じだと…。 バーナードとアーサーは連れ添って式典参加の代わりに。 戦没者墓地を訪れ、数ある墓石の中から、彼らの意中の名を探しあてる。 そんな彼らの行動を映画は追いながら。 一方で英国内の警察のSNS投稿で。 マスコミが【退役軍人の一世一代の大冒険❗️】と大騒ぎして。 施設にも連日押し掛ける“正に時の人”にまつり上げられた。 そんな事も知らずバーナードは愛する妻バニーの待つ施設へ帰りつき…。 マイケル·ケインとグレンダ·ジャクソンは50年前に[愛と哀しみのエリザベス](73)で夫婦役を演じて以来の共演との事でした💫。