レビュー
てっぺい

てっぺい

2 years ago

3.5


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ナミビアの砂漠

映画 ・ 2024

平均 3.1

2024年09月07日に見ました。

【振り回される映画】 最近の活躍目立つ河合優実主演、彼女の当てがき的に書かれた脚本で、その魅力満遍なく大爆発。何をしでかすか分からない存在が、共演者だけでなく見ているこちらもブンブン振り回してくる。 ◆トリビア ○ 河合優実は、山中監督の代表作『あみこ』('17)を観て女優になりたいと思い一念発起、「いつか出演したいです」と監督に直接伝えに行ったという。(https://www.fashion-press.net/news/117710) ○河合は演じたカナについて次のように語る。「そのハチャメチャな身の振り方が笑えたり、カナに自分を重ねちゃう人のことも肯定してくれるようなエネルギーがある。カナは後半に向けて不安定になっていくし、人のことを傷つけもするけど、リアルでありながらも魅力的なキャラクターにしたいと思っていました。」(https://fudge.jp/culture_life/culture/284446/) ○ ホンダが買ってきたバターサンドとじゃがポックルを見たカナが言うセリフ「甘いのとしょっぱいの嬉しい」について、段取りの際に現場がウケすぎて撮影が中断するほど、「1億点レベルで言ってくれた」と監督は河合を絶賛する。(https://namibia-movie.filmtopics.jp/2024/08/24/report/) ○河合のアドリブでハヤシのカップ麺の箸を怒って落とす場面では、金子大地は無意識にカップ麺をどかしていたという。「何をしでかすかわからないカナの本気度が伝わってきたので、それがハヤシとリンクしたな、と。ハヤシの気持ちがわかった気がしました。」と、カナに振り回されることに慣れてきた事を演じながら感じていたと話す。(https://sgs109.com/amp/news/id/18259/) ○ カナとハヤシのケンカのシーンは、ケガをしないようリハーサルを入念に行い、全て振付としたという。金子曰く「でも、やっていてすごく楽しかったですね。河合さんの叩きっぷりが良くて、途中で笑いそうになったこともありました(笑)。」(https://fudge.jp/culture_life/culture/284446/) ○ 映画の冒頭、歩くカナの望遠レンズでのズームアップは、東京・町田駅構内での撮影許可が下りず生まれた苦肉の策。韓国映画の巨匠、ホン・サンスが多用する技法だと自覚していた監督は「彼だけに与えられている(特権のような)現状が、気に入らなかったので。オマージュではないです」と反骨精神を見せつつ「一発目でズームをやることは宣言みたいなもの。その後のシーンでズームするハードルがぐんと下がる」と説明した。(https://hitocinema.mainichi.jp/article/interview-yamanakyoko-desertofnamibia) ○ 画面サイズをスタンダードサイズにした理由について山中監督は「カナは注意散漫な人だけれど、観客にはカナに集中して見てほしかったので視覚的な情報が限られる一番小さなサイズを選びました」と狙いを説明する。(https://namibia-movie.filmtopics.jp/2024/08/24/report/) ○ 現実世界と精神世界が反転する“ピンクワイプ”構成について監督は「喧嘩はすればするほどルーティン化していき、演じる様になる気がする。カナは物事を客観的に見る人だと思うので、そんなカナがハヤシとの喧嘩を客観的に見ている様を視覚的に表現したかった」と意図を解説した。(https://namibia-movie.filmtopics.jp/2024/08/24/report/) ○ 劇中に登場する、ナミビアの砂漠をライブ配信で見ることができるというYouTubeチャンネルは実際に存在する。(https://madamefigaro.jp/culture/240531-Namibia.html) ○ 本作は、人間関係の間で生まれる権力闘争を描いてみたかったという河合監督によるオリジナル作品。監督曰く、カナは河合優実を想定した当て書きだという。(https://madamefigaro.jp/culture/240531-Namibia.html) 〇「ナミビア」は「何もない」という意味で、その意味で今回は“愛の不毛”を描いてもいると思い、このタイトルになったと監督は明かす。(https://www.banger.jp/movie/115647/2/) ○ タイトルにはいろいろ変遷があり、"エメラルドゴキブリバチ"や"いつもごめんね、大大大好き”も候補だった。(https://madamefigaro.jp/culture/240531-Namibia.html) 〇山中監督と金子大地、寛一郎は同い年。金子は監督について、本当に大胆だと思うという。「バッサリ行くところはバッサリ行くので、観たことのない映画を観た気持ちになります。きっとこれからどんどん日本映画も進化していくんだろうな、どんどん大胆にやってほしいなと思います。」(https://sgs109.com/n/18259/d/) 〇山中監督は、思考の整理の手段として映画を作るという。今回の長編製作の話がきた際は、映画に何を求めていて、どんな作品が見たいのか、そして今の世の中に対する疑問などを紙に書き出したという監督。「すると、親子でも夫婦でも、人は2人以上になると上下関係が生まれる局面が多いことに気づきました。人間の権力関係や不誠実さについて描いてみたいと思いました。」(https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20240910/se1/00m/020/008000c) ○監督曰く、本作は男女の2対1との関係という意味でジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』、主人公のキャラクター像ではジャック・オディアールの『パリ13区』、ともに監督の趣味のフランス映画に影響を受けているという。(https://madamefigaro.jp/culture/240531-Namibia.html) 〇入場者プレゼントの「アザービジュアル・スペシャルポストカード」は、公開後2週間、週替わりで配布される。(https://news.nifty.com/article/entame/movie/12287-3343943/) ◆概要 2024年・第77回カンヌ国際映画祭監督週間国際映画批評家連盟賞受賞作品(女性監督として史上最年少)。 【脚本・監督】 「あみこ」山中瑶子(同作ベルリン国際映画祭フォーラム部門に史上最年少で招待された。本作で長編初監督) 【出演】 河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆづみ、中島歩、唐田えりか、渋谷采郁、澁谷麻美、倉田萌衣、伊島空、堀部圭亮、渡辺真起子 【公開】2024年9月6日 【上映時間】137分 ◆ストーリー 21歳のカナにとって将来について考えるのはあまりにも退屈で、自分が人生に何を求めているのかさえわからない。何に対しても情熱を持てず、恋愛ですらただの暇つぶしに過ぎなかった。同棲している恋人ホンダは家賃を払ったり料理を作ったりして彼女を喜ばせようとするが、カナは自信家のクリエイター、ハヤシとの関係を深めていくうちに、ホンダの存在を重荷に感じるようになる。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆カナ 駅の俯瞰からカナにゆっくりとズームする冒頭からは(これにまつわる監督のトリビアも面白い)、まるでカナがどこにでもいる一般の人間だと伝えているよう。ただしスタンダードサイズの画角(カナを集中して見てほしい監督の狙いだそう)により、余計な情報が削がれ、カナの粗暴ぶりも際立つ。忘れた頃に現れたタイトルは、ホンダの元を離れ、ハヤシと入れた鼻ピアスで街を行くカナの笑顔に乗り、まるでこの多感なカナの姿が本作のメインだと言わんばかり。カナとハヤシのケンカシーンに入る“ピンクワイプ”(ルーティン化したケンカを俯瞰で見るカナの表現だというのだから面白い)も含め、独特の演出で視覚的にも興味を引かれる。直上的で何をしでかすか分からないカナに、そんな独特の演出が乗り、ハヤシだけでなく見ているこちらも振り回される感覚で、否が応にも終始目が離せない作品だった。 ◆河合優実 そんなカナが当てがき的に脚本されたという河合優実。「ルックバック」やドラマ含め、最近の活躍目覚ましい彼女が、その持って生まれたアンニュイな表情をフル活用したポスタービジュアルにも惹かれ、鑑賞を決めていた本作。サラッとこなす体当たり演技もあれば(すいません目に焼き付けました)、“拾え”と当たり散らすケンカシーンもどこか自然すぎて笑えてくる。監督が1億点と称した「甘いのとしょっぱいの嬉しい」の言い方も確かによかった笑。1番ゾクっとしたのは冒頭。喫茶店で友人の話と“ノーパンしゃぶしゃぶ”の話が錯綜する中で、溢れそうな怒りを友人の前でギリギリ抑える目の演技が秀逸すぎだった。カナを見る映画であるのと同時に、本作は河合優実を見る映画でもあったと思う。 ◆マウント 人間関係の間で生まれる権力闘争を描きたかったという監督。ホンダとの生活にも、ホストクラブ通いにも表れている通り、いわゆる“マウント”をとる事を彼女は本能的に求め、キャンプの場や都庁で会ったハヤシの友人にはその意味で馴染めない。フォークをぐるぐる回すとハヤシが振り向きカナがほくそ笑む印象的なシーンも、“マウント”の一種と思えば頷ける。ケンカばかりのように見えたハヤシとの同棲は、“全部私が決めるんだよ!”とカナが叫んだ通り、無意識にマウントを求めるカナに、最終的にはハヤシが歩み寄っていく(食事を作り始めるなど)。ビデオ通話でニイハオ程度しか喋っていないが、“もっと喋れるでしょ”との母の台詞が正しければ、カナはバイリンガル。“ティンプトンって何?”のハヤシの言葉に(中国語でちんぷんかんぷんらしい)カナがニヤついたのは、この関係にカナがついにマウントを見つけた喜びか。その先を想像するならば、ハヤシはホンダのように路上で泣き崩れる路を辿るのだろう。続くエンドロールで映し出されるおそらくナミビアの砂漠(?)。ナミビアとは“何もない”との意味もあるらしく、カナがマウントを求め繰り返していくこと、引いては世の人間関係に起こるマウントの取り合いになんの意味もない事を本作が訴えるよう。解釈は見たものにより千差万別ありそうな、少し難解で、でもその分余韻の残る素晴らしい作品でした。 ◆関連作品 ○「あみこ」('17) 山中監督の代表作。監督はこの作品でベルリン国際映画祭フォーラム部門に史上最年少で招待された。配信情報ナシ。 ○「サマーフィルムにのって」('21) 河合優実と金子大地が共演。映画部の高校生の瑞々しい青春物語。プライムビデオレンタル可。 ◆評価(2024年9月6日現在) Filmarks:★×4.0 Yahoo!検索:★×4.3 映画.com:★×4.0 引用元 https://eiga.com/movie/101627