レビュー
星ゆたか

星ゆたか

9 months ago

4.0


content

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

映画 ・ 2019

平均 3.9

2025.5.22 「この世界の片隅に」(16)に約30分のシーンを追加した作品。ヒロイン·すずの周囲で暮らす人々の人生が更により深く掘り下げられた。 『原作の漫画を映画で見たい❗️』と言う人々の投下出費金(クラウドファンディング)により制作·公開され大ヒット。 この年は「君の名は」(244億)「シンゴジラ」(83億)等の記録で。 1955年に日本映画製作者連盟が統計し始めてからの最高の数字だったそう。 入場人員も74年以来となる、 1億8000万人を突破したとも。 「この世界の片隅に」の評価もキネマ旬報の選出者·読者のW受賞(私もアニメ映画として初のマイ邦画2016年NO.1)。 こうの史代のコミックを6年かけてアニメーション化したこの映画は。 太平洋戦争中の広島県·呉市を舞台に。 その地へ嫁いできた女性の日常を。 大人になり掛けてきた娘の視線·想いを。 非常に普通に丹念に描いている。 子供の視点でと言う反戦物語が、どちらかと言うと漫画映画では。 観客(読者)層への対応で多かったと思うが。 この作品では二十歳そこそこの若夫婦の性生活(最低限·防空壕で口づけ他)も含めて。 実に自然に普通の日常の暮らしの延長線上に、淡々と描かれていて。 大人も子供(ちょっと背伸びして)も漫画好きでない人も入り込める映画になっている。 片渕須直(かたぶちすなお)監督は1960年の戦後生まれ。 原作漫画のこうの史代さんも1968年(広島出身「夕凪の街 桜の国」もいい)だ。 題名は物語の“すず”さんが。 『この世界の片隅の私を見つけてくれ、一緒になってくれての幸福と感謝の気持ちを言葉にした所から』。 漫画連載の2009年2月号からで。 ❲昭和19年2月❳のエピソードが語られる仕掛に。 すずさんはこの頃の少女の多くの女性同様、家事全般を普通にしてきたので。 結婚しても、抵抗なく家族の食事(水くみも運んで)洗濯·掃除等を。 足の不自由な義母に代わりをこなし。 あの時代で食材や衣類の不足て、中々手に入らないから。 色々工夫(漫画で絵で説明)する。 食べられる植物を、近所から採取し、畑でこしらえる野菜と混ぜたり。 着物をモンペに裁縫し、直したりして身繕い。 ちなみにこのすずさんの声担当に選らばれた、のんさんは。 まろやかさ、ちょっとおっちょこちょい、意外と行動力があって。大人の声になったり、18歳の嫁入り等の声を表現出来るのは、のんさんしかいないと。製作前から監督らが意識していたそう。 夫も性格はおとなしく真面目だが、海軍法務局勤務の仕事で、直接兵隊には出ず、しかも生き残れた結末は、妻が片手のない障害者になってしまったからのこそ、この映画の救いだ。 また日頃から妻すずへの配慮のできる人だから、戦後も立派にすずさんと一緒に生きていけそうだ。 今回の30分増えた部分にはその夫と。 すずが道迷いで知り合い仲良くなる遊廓の娘リンが。 実は、夫がかつて関わりあって(想いも)いたという複雑な乙女心(どちらも好きで、戦時下の過去)に響くエピソードが加えられた。 あと、戦火のこの時代だからこその場面としては。 夫が、すずの同郷の幼馴染みが海軍の水兵になってすずの所を訪ねてくる場面で。 その男が、明日の命も? すずさんとも、今生の別れになるかも知れぬと。 すずと、その幼馴染みを一晩納屋に一緒に寝かせる心配りをする。 世が平静なら、夫が妻に、そこまでの配慮はしないだろう。 この映画は近年宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」が。 内容が同じ戦時下物語のアニメであるが。宮崎駿監督への畏敬心もあり。 アメリカ·アカデミー賞受賞になっているが。 「この世界の片隅に」はあの広島原爆に触れている物語なので。 『戦争終結に必要だった』との正統性が米·国民意識の中から無くなならない内は評価されないだろうと思う。 例え、原爆投下の悲惨な実態描写がなく。代わりに。 すずさんが義姉の子を。 手を繋いだ先(すずも右手を無くす)のまま爆死される描写だけに集約(戦争の悲惨さ)されていたとしても。 この映画の2年前、2014年オバマ大統領が米初の広島訪問でしたからね。 あの時代を後世にまで伝えたい価値あるものにしたいと言う強い意思は?。 あの時代の人間はどうしてあぁも順々に苦しみに耐え。 きっといつか、それも終わると信じ従っていたのか!。 なるべく考えまいとし…。 だからこそ、今平和な国にいる我々はその事を忘れず、考える時代にいるのだろう。