
dreamer

ダンケルク(1964)
平均 3.3
このフランス映画「ダンケルク」は、ロバート・メルルの小説「ズィドコートの終末」の映画化作品で、1940年6月の北フランスのダンケルクに近い海岸に40万人近くの連合軍側の兵士たちがいた。その中の3人の男たちが出会った娘をめぐるエピソードを中心に、戦争による悲劇を厳しく見つめた作品だ。 第二次世界大戦を素材にした戦争映画は数多いが、この作品のような角度から描いた映画は珍しい。 連合国側のダンケルクでの退却は、第二次世界大戦でも、ノルマンディー上陸作戦に次いで有名な事件なのに、負けて退却するという事で、それまで戦争映画の題材として描かれる事がなかったのだろう。 そのダンケルクでの退却をテーマにしているところから、公開時は珍しい異色の戦争映画だったのだろうが、壮烈無比とか凄惨苛酷といったものでもなく、アメリカ映画のように英雄主義ともかけ離れていて、まさに袋の鼠となり、土壇場まで追いつめられているのに、すこぶる人間的な男たちを描いているのが異色で、さすがフランス映画だなと妙に感心させられた。 逆に言えば、この作品に壮絶な戦争スペクタクルを期待したりすると、エキストラを大勢使い、規模は大きいにも拘わらず、物凄い迫力の場面はなく、都合のいい時に敵のドイツ軍が砲撃してきたり、飛行機が来襲したりする程度なので、肩透かしをくらってしまうが、実はそのようにスペクタクルとして描かないところが、この作品の良さなのかも知れない。 例えば、主人公のジャン・ポール・ベルモンドは、船に乗せてもらえず、うろうろするが、少しも焦ったり不安に怯えたりしているような表情を見せない。彼を取り巻く数人の登場人物も同様で、すこぶる日常的なのだ。 不思議なもので、この映画を観ているうちに、これが本当で、やたらに悲壮がったり勇敢ぶったり、通常の戦争映画の人物の方が嘘じゃないかと思えてくるほどだ。