
dreamer
4.0

ブリンクス
映画 ・ 1978
平均 3.3
"鬼才・ウィリアム・フリードキン監督が仕掛けた泥棒映画の怪作 「ブリンクス」" この映画「ブリンクス」は、ジャンルとしての"泥棒映画"の怪作で、1950年代に一世を風靡した金庫破りの逸話の映画化で、全米最大の金融警備会社"ブリンクス"の大金庫から、10分間で55億円の札束を強奪するという、破天荒な内容の映画を、「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」の鬼才ウィリアム・フリードキン監督がメガホンを取った作品です。 少年時代から泥棒一筋に生きて来た男トニー(ピーター・フォーク)が、6年かけて準備を進め、6人のプロを集めて大金庫を狙います----。 誰でも億単位の大金を手にしてみたいという願望を夢見ますが、それには完全犯罪をしでかすしか方法がないという事で、この映画はその夢のような話を目の前に提示してくれます。 この映画で見せてくれる大泥棒は、高度な"芸術"で、素質、計画性、相棒、決断力が必要条件で、成功しても捕まらぬように逃げ回るのが、実行するより難しいときています。 このような、"泥棒映画"の楽しみは、やろうとしたって我々、並みの人間には出来ない事を、ものの見事にやってのけて逃げおおせ、我々の大泥棒への憧れを満たしてくれるところにあるような気がします。 「刑事コロンボ」よりもっとひどいかっこうをした、我らがピーター・フォークが主犯で、「ヤング・フランケンシュタイン」のピーター・ボイル、「デリンジャー」「ガルシアの首」のウォーレン・オーツなど、一癖も二癖もありそうな、冴えないヘマ人間ばかりがメンバーなのに、アメリカ犯罪史上最大と言われる大金強奪事件を、まるでドキュメンタリー映画みたいにやってのけるのです。 やはり、この映画全編に渡って横溢するドキュメンタリー・タッチの映像表現は、TVのドキュメンタリー畑出身で、「フレンチ・コネクション」同様に、スピーディーで歯切れのいいタッチの演出にウィリアム・フリードキンらしさが出ていて、映像の魔力にワクワクさせられます。 我々、庶民と同じような等身大の連中が、どでかい事をしでかす"カッコよさ"、ヨレヨレでボサーッとしているからこそ、なおさらカッコよく見えるのです。 この映画の題名の"ブリンクス"とは、アメリカのボストンにある全米最大の金融警備会社の事で、"わが社の辞書には事故・盗難の文字はない"と豪語するほどですが、ヨレヨレ組のイカス連中は、"俺たちの辞書には失敗の文字はない"と、果敢に挑戦して、ものの見事にいただいてしまうのです。 とにかく、この映画には、美男美女が一人も出て来ないので、我々は彼等がどうやって盗み、どうやって逃げおおせるのかに興味を集中させ、大泥棒のカッコよさに、ボストン市民と共に、拍手喝采を送ってしまうのです。